「いいよー」
そう言って、キヲンは赤髪のコドモに白い生き物を手渡した。
「お、かわいいな」
いい子だな〜と赤髪のコドモこと露夏は白い生き物の頭を撫でる。
「コイツ名前なんて言うんだ?」
赤髪のコドモがキヲンに尋ねる。
キヲンはまだ決めてないよと答えた。
「そうか〜」
お前まだ名前ないのか〜と露夏は白い生き物に顔を寄せる。
そしてひとしきり頭を撫でた後、キヲンに白い生き物を返した。
「ほい」
「ありがと」
キヲンは白い生き物を受け取ると、今度は少し離れたところで紅茶を飲んでいるゴスファッションのコドモに近寄った。
「ねぇナツィ!」
見て見て、とキヲンはゴスファッションのコドモに白い生き物を見せつける。
初恋だった、毎日が煌めいていた、
脆くなる心を転がされながらも立ち向かっていた。
初めてが消えていく、毎日が薄くなっていく。
半年前に枯れた花はいつの間にか無くなっている。
枯れた花のことを気にする間もなく、
あの人は新しい花を愛でているらしい。
別に戻りたくはない。
それでもちくりと胸が痛んだ。
あの人は前を向いているんだな、と思った。
自分は後ろ向きかな、とも思った。
また枯らしてしまうのが怖くて、
花を咲かせたいのに近づけない。
臆病になったのは何のせい?
分かっている。
でも気のせいだと誰かに言って欲しい。
それともうひとつ、
ひどくネガティブな心で、
それでいて目で追いかけてしまう「君」とは
枯れない花を咲かせられるのでしょうか。