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幺妖造物茶会 Act 12

「ほら行くぞ」
「あ、うん」
キヲンは露夏に言われて慌てて引き下がろうとする。
ピスケスも元来た道へ戻ろうとするが、ふとその場に突っ立ったままのかすみに気付いた。
「…かすみ?」
どうしたの?とピスケスが尋ねる。
かすみはハッとしたように振り向く。
「…ねぇピスケス、もしかして」
あの精霊って、とかすみは目の前の精霊を指さす。
「きーちゃんが拾ってきた子の親なんじゃ…」
かすみが言い終わる前に、ナツィ、キヲン、露夏がえ、と呟く。
「いやだって似てるし…」
「確かに言われてみればそうね」
かすみの言葉にピスケスは頷く。
「ツノとか顔立ちとか、似てるわね」
「えぇ…」
ピスケスの発言を聞いて、ナツィは目の前の精霊に目を向ける。

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雨傘造物帰路 中

「今はお前に構ってる気分じゃないんだ」
だから、放っとけとナツィは呟く。
「…」
かすみは思わず黙りこくる。
「もういい」
俺もう行くから、とナツィはそのまま歩き出そうとしたが、急にその腕を掴まれた。
振り向くと、かすみがナツィの左腕を掴んでいる。
「…ナツィ」
かすみはポツリと呟き、ナツィの腕を握りしめた。
「無理、しないで」
かすみは絞り出すように言った。
「…」
ナツィは思わず驚いたような顔をする。
自然とその腕から力が抜けた。
「ナツィ、何かあるといつも1人で抱え込むもん」
自分には分かるよ、とかすみは笑いかける。
「だから1人にならないで」
話、聞くからとかすみは言った。
ナツィはつい俯く。