駄菓子屋の店内で、わたし達はそれぞれ好きな駄菓子を買った。
ネロはいつも通りココアシガレット、耀平は海老せんべい、黎は棒のついたアメ、師郎はスルメイカと言った具合に。
ちなみにわたしはコンビニにも売っているようなグミを買った。
わたし達は各々会計を済ませた後、駄菓子屋の店先に座り込んで買った物を食べていた。
「そう言えばネロ」
皆で駄菓子を食べながら談笑していると、ふとミツルがネロに話しかけた。
「何ミツル?」
またサワーシガレットの方が素晴らしいって話?とネロは訝し気な顔をする。
「いやそうじゃなくて」
ミツルは思わず苦笑いする。
「この女とどうやって出会ったのか教えて欲しいんだけどさ」
ミツルは隣に座るわたしを指で指し示した。
わたしは思わずえっ、と驚く。
「どう?」
等価交換でお前の好きな駄菓子を買ってやるぜ、とミツルはネロに笑いかける。
ネロはえー、と不満気に答えた。
そんな訳はないが、沈黙が10分くらい続いたように感じる。でも多分、本当は1分くらいなんだと思う。
そんな沈黙を甲斐田が破ってくれた。
「マア、そもそも生きとる若いもんが死について考えんなんてのは早すぎるってもんじゃ。死ぬことなんて、考えんで言いなら考えん方が良かくさ」
「そうなのか……」
よくよく考えれば、この頃、死のことばかり考えている気がする。確かにそれは健全ではない……のかも今の俺には分からない。だから中途半端な返事になってしまった。
「というか、もうこんな時間じゃないか」
甲斐田が急に話を変えてきた。無理矢理な感じもするが、反射的に甲斐田が視線を向けた時計を見上げてしまった。
時計の分針は7を指そうとしていた。
「じゃ、わしはここいらで」
「……は?」
え、え……?唐突に話を終わらせようとし出したぞ。まだ話は終わってないにも関わらずだ!
しかし、だからといって何を言えばいいのかも分からない。
「そいじゃあ、もうこんな遅くに残ってんじゃないぞ」
「えっあ、え、ま、また」
「もー会わんよ阿呆が。じゃあな、暗うなる前にはよ帰るんじゃぞー」
「ちょっと待てって」
俺は焦って言葉足らずながらも止めようと試みる。甲斐田の方に手を伸ばすが勿論届かない。甲斐田は窓の外の藍の空をバックに幼く無邪気な笑顔を浮かべる。
そうして最後に言った言葉に、俺は一言
「……無粋だ」
それだけ呟いた。
悪態は俺しかいない仄暗い教室に行き場なく響いた。
君が隣に居る今日は
一体何時まで続くだろう
君が側に居なくなったら
僕には一体何が残る?
君がきっと僕の全てで
君が僕の存在証明
あぁ、それなら
僕は一体誰だろう