「トウカはおれたちの“恩人”だから…」
アカネはそう言いかけて、不意に言葉を止めた。
「?」
どうしたのアカネとトウカが首を傾げた所で、アカネは突然こう叫んだ。
「伏せろ‼︎」
その言葉と共に、辺りに銃声が何発も鳴り響いた。
「!」
トウカが驚くよりも早くアイはトウカを伏せさせ、アカネもその場に伏せる。
「…」
銃弾の雨が止んだ所で、アカネは建物の屋根を見やりながら立ち上がる。
そこには覆面姿のスナイパーたちがいた。
「出やがったか…」
アカネはそう呟いて、2人共、大丈夫か?とトウカとアイの方を見る。
「大丈夫よ」
「平気です」
立ち上がる2人を見ながらアカネはなら良かったと声をかける。
「とりあえず、アイはトウカを連れて安全な所へ逃げてくれ」
アイツらはおれらがなんとかする、とアカネはアイの目を見る。
「了解です」
アカネさんも気を付けてくださいね、とアイは言うと、行きましょうとトウカを連れてその場から立ち去った。
アカネは2人が立ち去る様子を見送ってから、建物の屋根を見上げる。
さっきトウカを狙ってきたスナイパーたちはもうすでにその場から去っていた。
「…聞こえるか、みんな」
アカネは耳の通信機に手を当てながら言う。
「さっき襲撃されたんだが、犯人どもに逃げられちった」
多分奴らはまたトウカを狙ってくる、とアカネは付け足す。
「だからおれたちは奴らの作戦を阻止する!」
絶対にトウカを守り切れ!とアカネは語気を強めた。
「了解‼︎」
通信機の向こうから、威勢のいい声が聞こえた。
「…頼んだぞ」
アカネはポツリと呟くと、その場から走り出した。
一生懸命出来ないことを
最近の暑さのせいにして
布団の上で横たわる日々
このまま溶けてしまえたら
想像だけが部屋いっぱいに広がる
部屋から忽然と私だけが消える
溶けたら痕は残るのだろうか
名探偵もビックリの大事件だ
少し笑えて
でもやっぱり体は重い
あー、本当に消えてしまえたらな
妄想は、続く
敵は
暑さだった
飢えだった
渇きだった
脚気だった
赤痢だった
マラリヤだった
戦友だった盗人共だった
ところで
おれたちは
何でここにいるんだったかな
どんなに激しい大雨で
身体も心も湿気たって
辛く苦しい夜更けの中で
暗闇に溶ける夢を見たって
きっとそれは8月の
気分屋な空とおんなじで
いつかはきっと、未来はきっと
眩い程の青空に成る
だから今日もね
愚直にね
青に飛び込み夏を纏う