強くまばゆく輝く花火が夜空を彩る
胸に籠る破裂音が心を満たす 歓声が響き渡る
美しい大輪 刹那に生きる 儚く散る ループ再生
灯台もと暗し ならぬ 花火のもと暗し
妖怪共の食い散らかした 大量の残骸の山
後始末 火の不始末 頓珍漢な大騒ぎ
陽気なお祭り気分も程々に
相棒の良太郎が謎の怪人に体を乗っ取られた。
「良太郎!戻ってこい!」
しかしそんな呼びかけもなかなか届かない。
「呼んでも無駄、相当痛めつけておいたから当分目は覚めないよ!」
そんな無慈悲な言葉と共に攻撃されてしまう。
「…ぐっ…聞こえるか!良太郎!俺だ!」
「聞こえないよ!」
「うるせえ、お前になんか言ってねーよ!聞こえてるはずだぜ…お前、抑えてんだろ、それをよ!」
必死に呼びかけるが攻撃の手は一向に止まらない。もはやこちらの体力は限界寸前。
「だからよ…良太郎…もうちょっと踏ん張って…そいつを追い出せ!…できるよなぁ!…良太郎!」
最後の叫びの如く彼はその名を呼んだ。しかしそれが隙と言わんばかりに敵の刃は彼の左鎖骨を捉えた。
「いいから…死ねぇ!」
左鎖骨から右脇腹への袈裟斬りが見事に入り、断末魔と共に彼の体は倒れようとした。
しかしここでその敵が彼の腕を掴んだ。
「何!?ま、まさか!」
敵自身も驚いている。つまり…
「へへっ、やっぱな」
その瞬間、良太郎の体に彼が憑依し、敵の怪人が外へと追い出された。
「なんでだよ!なんで…」
敵怪人は正に困惑といった表情だ。
「バカヤロー、俺達がどんだけ一緒にいたと思ってんだ、いいか?今から本当の変身ってやつを見せてやる」
「変身!」
蝉がうるさいくらいに鳴いている路地裏。
キャップ帽を被った赤髪のコドモが1人歩いている。
赤髪のコドモはふととある建物の前で立ち止まると、おもむろにその扉を開けた。
赤髪のコドモはそのまま建物の中にある階段を上がると、階段のすぐ傍にある物置に入っていった。
「おっ涼しっ」
物置に入って早々そう呟くと、赤髪のコドモは被っていた帽子を取る。
帽子の下からは犬のような耳が現れた。
「ここ冷房なんてあったっけ?」
赤髪のコドモがそう尋ねながら物置のテーブルの傍にあるイスに座ると、隣に座る青髪のコドモがふふふと笑う。
「実は内部の温度を下げる結界を張ったの」
物置に冷房なんてないから、とりあえず簡易的にねと青髪のコドモは言う。
「へー、すげぇじゃんピスケス」
さっすが〜と赤髪のコドモは褒める。
「あら、ありがとう露夏」
ピスケスと呼ばれたコドモは赤髪のコドモこと露夏に微笑む。
するとここで物置にエプロン姿のコドモが入って来た。
久しぶりに言葉を紡ぐときに
あなたの背中が見えた
そこに居るのだとわかった
こころが熱くなった、わたしは
決してひとりではないと
こころぼそくなりそうな空に
ありがとうを呟いた
今日、花火大会があるよ
カンカン照りのアスファルト
うだるような暑さと向日葵
言葉が青空に消えていった
何も言えなかった
二人だけの夏休み