「抜けました! 脱出成功です!」
剛将の言葉と同時に、二人は村の境界を踏み越えた。
剛将の声に応え、小型ドローンは1度宙返りを決めて見せる。
『よく逃げ切ったね。最後に1個面白い機能を見せてあげよう。その名も“ミミック・フィスト”』
義腕が一瞬強く光り、その光が止むと義腕は人間の腕と変わらない外見に変わっていた。
『光の力を消費して、“人の腕の映像”を義腕の上に投影したんだ。人体に不自然な変形をしたらすぐに解除されちゃうから気を付けてね』
「あ、はい了解です。……え光の力使ってるんですか?」
『うん』
「僕の?」
『そりゃまあ。一応アンプル燃料の分がまだ残ってるから今日1日ぐらいはもつとは思うけど。光の力で動く以上、戦闘に使える力は減るから気を付けてね。何だったら、普通に学校で貰うP.A.を使った方が良いかも。アンプルは欲しかったら郵送させるから、必要になったら自宅か学校の住所教えてね。窓口には我が親友、三色吉代を通してもらえれば大丈夫だから、洞志村民避難地の……あれ何番だっけ』
『3番だな』
『そこを訪ねてくれれば良いから』
「分かりました、ありがとうございます」
『カゲが手を出してくるとも限らない。早く帰りな』
「はい、ありがとうございました」
「お世話になりました、失礼します」
「私言おうとしたんだけど」
グレートヒェンがそう言うと、別にいいじゃないと藤紫色の髪のコドモが笑う。
「ちゃんと“きょうだい”に説明してもらって嬉しいわ」
藤紫色の髪のコドモこと“メフィストフェレス”はそう言ってナツィの顔を覗き込む。
ナツィは、テメェには言われたかねーよと顔を背けた。
「そもそも俺はお前のことを“きょうだい”だなんて思ってねーし」
「あーら照れちゃってー」
メフィストフェレスはそう言って微笑むが、ナツィは益々嫌そうな顔をした。
「まぁそんなことはともかく」
さっさと行きましょ、とグレートヒェンは手を叩く。
「他にも魔術師がこの捕獲作戦に参加してるって言うし」
待たせては悪いわ、とグレートヒェンは微笑む。
「そうだな」
「そうね」
「…」
それぞれがそう答えると、4人は山の奥へ向けて歩き出した。