「“ドロテー”!」
どうして…と“トラウゴット”は困惑する。
「黒い奴が急に飛んでったから、やられちゃうんじゃないかって」
心配になって…と“ドロテー”は涙目で続ける。
「…テメェら」
ここでふとナツィが呟いた。
「なにいちゃいちゃしてるんだよ」
グレートヒェンを襲おうとしてたんじゃないのか、とナツィは言う。
「…なによ」
なにか文句でも?とドロテーは立ち上がる。
「うちのグレートヒェンに手を出しやがって…」
許さねぇぞ、とナツィは大鎌を握り直しつつ歩み寄る。
「ここで、地獄に送ってやる‼︎」
ナツィはそう声を上げて大鎌を振り上げる。
「!」
トラウゴットとドロテーは驚きの余り身動きが取れなかった。
「…ナツィ!」
不意にグレートヒェンが名前を呼んだので、ナツィはハッと我に返る。
「そこまでしなくていいわ」
グレートヒェンがそう言うと、ナツィはちらと彼女に目を向ける。
黒いコドモはグレートヒェンに突っ込みそうになったが、すんでの所で耐えて彼女の傍に降り立った。
「…」
黒いコドモは黙って少年の方を見る。
「なんだお前」
「なんだお前ってこっちのセリフだ」
少年の言葉に対し、黒いコドモことナツィは低い声で返す。
「よくも、よくもグレートヒェンにやってくれたな」
テメェら…とナツィは少年に近付く。
少年は怯えたように後ずさった。
ナツィは手に持つ大鎌を振り上げると、少年の脳天目がけて振り下ろそうとした。
と、ここで声が聞こえた。
「…“トラウ”ー‼︎」
ハッと声がした方を見ると橙色の髪の少女がこちらに向かって飛び込んでくる。
「⁈」
ナツィは翼を羽ばたかせてそれを避けた。
少女は少年に駆け寄った。
「“トラウゴット”!」
大丈夫⁈と少女は声をかける。
「“ドロテー”!」
どうして…と“トラウゴット”は困惑する。
夢を見る
君を描く
明日にきっと知る君を
私はまだ描ける
まだ知らない君の姿も
私はきっとすきだ