ピンポーンとインターホンが鳴って暫くして、ガラガラと引き戸が開いた。
「…」
玄関には2つ結びの見慣れない少女が立っていた。
「鏡子?」
「ハ~イ”結香吏(ゆかり)”ちゃん、師郎達はいるかしら?」
稲荷さんが手を振りつつそう言うと、”結香吏”と呼ばれた少女はいるよ、と答える。
「あの人が師郎達に会いたいって言うから、後は頼めるかしら?」
稲荷さんがこちらを見ながら尋ねると、結香吏はうんとうなずく。
「じゃあ任せたわ」
稲荷さんはそう呟くと、わたしにこう呼びかける。
「じゃ、後はこの子にお願いするから」
わたしはこの辺で~と稲荷さんは一軒家の敷地を出る。
「え、ちょっと?」
わたしは戸惑ったが、稲荷さんは気にせずその場を後にした。
「…」
その場には微妙な沈黙が流れた。
わたしが一軒家の敷地内を見ると、家の玄関で2つ結びの少女がこちらを見ている。
「…上がりなよ」
少女こと結香吏がそう言うので、わたしはじゃ、失礼しますと日暮邸の敷地に入っていった。
「だれ?」
クリスタルが尋ねる。
「ライトニング・クォーツ。気軽に雷神様とでも呼んでくれ。時にお前ェさんら」
「何さね雷神様」
ネコメが反応する。
「儂をここから出しちゃアくれねえか」
「なんで? 捕まってるんでしょ?」
「まアそうなんだがな。儂はいつまでもこの場所に居るわけにャアいかねンだ」
「外でやりたいことでもあるの?」
「まァな」
そう言って、ライトニング・クォーツは懐から水晶の塊を取り出し、自身の足元に静かに置いた。
「それなに?」
クリスタルが尋ねる。
「儂の相棒だ。大昔、戦の最中に核を6割砕かれ死んだ。その核を精密に取り出したものがこいつだ」
「はぇ」
「儂はこいつを蘇らせる。こんな場所に押し込められていちゃア、それもままならねェ」
ライトニング・クォーツは再びその核をしまい、檻に手をかけ二人を睨みつけた。
「だから頼む。儂をここから出してくれ」
ネコメとクリスタルは目を見合わせ、ライトニング・クォーツに視線を戻し、同時にきっぱりと答えた。
「「いやだ」」
九州を訪れるのが初めてと言うこともあって位置関係を誤認しており,博多も港町で福岡の中心地から近いのだから,ハンブルクや横浜のように中心駅から歩けると思っていて港から博多駅まで徒歩で行こうと提案したら「地下鉄の中洲川端,百歩譲って天神まで歩くならまだ理解できるけど,博多駅って結構離れとるよ。そがん所まで歩くなんて何考えとるの」と初っ端からツッコまれる羽目になった。
すると暫くして嫁が誰かに電話し始め,それからすぐに行き先が決まった。
最初に目指すのは港から徒歩で行ける距離にある呉服町というエリアで,嫁が予約した「あるもの」を受け取りに行くとのことだ。
そして,現地に着いてその「もの」の正体が一台のレンタカーであったことに気付く。
まず車で向かったのは嫁の実家で,そこで初めて義両親と対面することになった。
幸いにも,義父は俺と同じ東京出身で巨人ファンらしく,プロ野球は観るかと訊かれて自分は巨人ファンだと伝えると,笑顔で昔を懐かしんで現役時代の江川は負け知らずで云々,ONの2人や藤田さんが監督の頃は面白かったが当時主力だった原が監督になってからは今までと打って変わって云々と,とにかく巨人を中心に昭和から平成初期という俺が産まれる前の頃の話を聴かせてもらえたのでかなり充実した時間となった。
そして嫁が好きな町,糸島へ行き海を見て一句詠んだら嫁が「もう時間や。車返さんと」と言うので引き揚げ,義父が勧めてきた場所であり個人的に1番行きたいと思っていた場所へ行くことになった。
元々身長が低くて童顔なのもあって普段は子供っぽくて可愛らしい雰囲気だが,ハンドルを握らせると実はクールな大人の女性になるという嫁のギャップに惚れてしまい,嫁と結ばれたのがどれほど幸せなことか実感することになった.