「こんなことで一般人に知られてはならない」
ナツィがそう言うと、こ、こんなことって…と露夏は呆れる。
「ま、バレたらバレたで大変な目に会うのはお前らとその“家族”だからな」
“家族”を大事にしてるんなら、ちゃんとそこも意識しろとナツィは露夏に目を向けた。
「…」
露夏はつい黙り込む。
「ま、分かったんならいいんだよ」
戻るぞ、とナツィは公園の方へ引き返す。
「あ、待ってナツィ」
キヲンは慌ててその後を追う。
かすみも静かに歩き出す。
「行くわよ露夏」
夏緒ちゃんも一緒に、とピスケスは呟いた。
「…あぁ」
露夏はそう言って夏緒、と夏緒の方を見る。
夏緒は不安げな顔をしつつ顔を上げる。
「行こう」
露夏が優しくそう言うと、夏緒はうん、と少し笑顔を見せた。
そして露夏は夏緒の手を取ると、静かに歩き出した。
〈迷兎造物茶会 おわり〉
すっかり荒んだビル街を、二人の少年が和気藹々と歩いていく。
苔むした国道にツタの這い散らかした摩天楼。かつて世界でも指折りの大都市だったらしいこの街は、人より鳥の数のほうが多くなって十数年経つ。そんな街路に二人のはしゃぎ声はあまりにも異質に響いた。
「……で、その時の遺骸から摘出された第二頸椎が、どうも新しく開発される武装具の核になるらしくてな」
「へぇー、それ本当に効力あるの?」
「さてね。大方単なる“アヤカリ”ってやつなんだろ。極西のやつらの考えることはわからんな。」
「何言ってんの、てっぺいもそういうことするでしょ」
「てっぺい言うな」
そう言うと、『てっぺい』と呼ばれた少年は足もとの瓦礫の石ころを軽く蹴飛ばした。暗い赤髪の長い襟足が揺れる。
「はるばるヴェスプタくんだりまでやってきてなんで東洋風な名前で呼ばれにゃならんのだ」
「くんだりって、俺たちの前任地よりよっぽど大都会でしょうが」
「この廃墟ぶりを見ても大都会と言うか、たろうはよっぽど辺境の出らしい」
「だからたろうやめろって」
『たろう』はパーカーのひもをプラプラいじりながら答える。淡い青の背中には大きな毛筆の字で「防人」という字が踊り、その左下には小さく「でぃふぇんちゅ」と書いてある。いくら僕が、バカっぽく見えるからもう少しましな服を着たら、と提言しても「かっこいいっしょ?」と全く馬耳東風だ。お好きに。
「ねぇえぇ、松永が言ってた“絶景スポット”ってまだ着かないの」
振り返りながら嘆く『たろう』。
全然先だよ。というか行程の二割も歩いてないんだけど。あっ、露骨に不機嫌そうな顔をするんじゃない。旅行だ遠足だってはしゃいでいたのは君じゃないか。
「そうはいうけどさぁ、もうそろそろビル見飽きたもーん」
「昼でも薄暗いのには確かに参るな。このビル街はどこまで続くんだ」
もうじき開けた道に出るよ。そう言って僕は左腕のデバイスで昨日の晩インストールしておいたマップデータを確認する。三つの緑のバイタルシグナルが点滅しながらゆっくりと太い白線をなぞっている。
「ほんと!じゃあそこまで行こう!早く早く!」
「おい待てッ、いきなり走り出すんじゃない!」
騒ぎながら駆け出していく少年二人を、僕は見送りながら後を歩く。まるで中学男子だ。
まず、「人外人間譚」について。
沢山の作品、ありがとうございます。
期間はまだありますので、ゆっくり投稿してください。
次に謝罪について。
最近、あまり掲示板を見る事ができなくなってしまいました。
そのため、日替わり投稿もズレが生じています、いつも読んでくださる方々、本当にすみません。
とりあえず、風邪が治る(おそらく再来週)まで投稿を止めます。
申し訳ありません。
「……何?」
「私、モンストルムやめて人間になる」
「生物学的に無理じゃね?」
フェンリルの茶々を無視して続ける。
「人間側になる。それで、まともなモンストルムの子たちに守ってもらう」
「良いんじゃない? じゃ、あと2人脱走派を引き入れようか」
「……なんで2人?」
「俺の意向だよ」
フェンリルが答える。
「俺は別にどっちでも良いから留まっとく派だったんだが……いや脱走して人間ども困らせるのもナシじゃねーんだけど、スレイプニルが俺とじゃなきゃ出ないっつーから決めたんだ。俺らの集まりが偶数の時、票が偏った方に決めるって。今はデーモン合わせて2対2だな」
「そういうこと。まあ、ここに不満持ってる奴はそれなりにいるし、すぐ出られるんじゃない?」
スレイプニルはそう言って、自分の独房に引き返していった。
「デーモン、私のことも運んでくれる?」
「勿論」
私もデーモンに自分の独房まで連れて行ってもらった。何も無い硬い床に寝転がったけど、これまでの壁に括られた状態よりもずっと身体が楽だ。
ここでは最低限の食事は貰えるし、“メンテナンス”も受けられるから、この怪我もきっと良くなる。そしたら、フェンリルやスレイプニル達と一緒に脱走したいってモンストルム達を集めて、外に出るんだ。何だか希望が出てきた。
まずは戦いで失った体力を回復させなきゃ。私は再び、気絶するように眠りに就いた。
「という訳で、今回もインバーダの討伐に成功した、が…」
クララドル市インバーダ対策課本部の会議室にて、1人の男と5人のコドモたちが向き合っている。
「この惨状はどういうつもりなんだ」
男、もとい羽岡は呆れたように会議室のスクリーンに写真を映す。
そこには破壊された街並みが映し出されていた。
「…だって今回40m級の奴が出たんだし」
「それを考えても1体しか出てきてないだろう」
短髪のコドモ、ワイバーンの言葉を羽岡は遮る。
ワイバーンは思わず黙り込んだ。
羽岡はため息をついてから続ける。
「…ゲーリュオーンの暴走により他のモンストルムたちを攻撃、街を破壊した」
全く、どうしてくれるんですかと羽岡は呟く。
「モンストルムが破壊した建造物の補償は、我々対策課の業務でもあるんです」
ただでさえ我々は忙しいのに、と羽岡は付け足す。
「一体どうしてくれるんですか」
「ンなこと言われても」
金髪のコドモ、イフリートが腕を組んで言う。
「おいらたちの仕事はインバーダを退治することなんだから、仕方ねーだろ」
「質問の答えになってませんよ」
イフリートの言葉に対し、羽岡は突っ込みを入れる。
想像もしていなかった忙しないこの日々に
流れゆくたいせつなものたちひとたち
今年はひとり
ことりとグラスを置く
不思議と寂しくないのは
遠くても同じ空の下
繋がってくれる君たちがいるから
もうしばらく続くだろうか
この余裕のない日々が
いつかきっと夢を叶える鍵になると言い聞かせて
また君に会う日まで 出逢う日まで
さびしい、も
あいたい、も
全部一緒に抱えて来てくれるきみと
たのしい、も
しあわせ、も
こうやって作っていくんだ
振り返れば思い出で溢れていて
また前を向けばきみの笑顔が輝いてくれる
きみがいるからわたしが辛くないように
わたしがいるからきみのつらさを飛ばせるように
またふざけて笑っちゃうから
またきみはそれを横で見ていて
どうも、ナニガシさんこと何かが崩壊している者です。
ナニガシさんが現在開いている企画『ピッタリ十数字』の本番がすぐそこまで近付いてきましたので、ちょっとしたお知らせみたようなものをば。
題して『ピッタリ十数字・勝手に表彰』。
期間終了後、ナニガシさんが特に気に入った作品をいくつか、勝手に紹介させていただくものです。都合上、遅刻組を対象に入れるのはキツイか……?
主催者ではない人間も、「このポエム特に気に入った!」ってのがありましたら、『ピッタリ十数字・勝手に表彰』のタグを付けて投稿して良いですよ。これを機に、ポエム書きの技術を他人様からガンガン盗んでいきましょう。
一応、『勝手に表彰』の方は3月入ってからにしてください。