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逃鷲造物茶会 Act 12

夜、日が暮れて暫く経った後。
かすみが客のいなくなった喫茶店内を箒で掃き掃除していると、店の裏口のインターホンがピンポーンと鳴った。
「?」
今喫茶店の主人は1階にはいないため、応対できるのは1階にいるかすみだけである。
こんな時間に誰だろうと思いながらかすみは店の奥に向かい、裏口の戸を開ける。
そこには見慣れない女が立っており、後ろには物々しそうな男が2人立っていた。
「こんな時間にすみません」
“鵜沼(うぬま)さん”はいらっしゃいますか?と女はかすみに尋ねる。
「いますけど…ここのマスターに何か用ですか?」
かすみが不思議そうに答えると、女は淡々と告げた。
「ちょっと鵜沼さんと我々だけで話したいことがありまして」
彼を呼んでくれませんか?と女はかすみに言う。
「あ、はい」
かすみはぱたぱたと2階へ行き、喫茶店の主人を1階へ連れてきた。
「こんばんは」
裏口へとやってきた喫茶店の主人である老人がそう女たちに挨拶すると、女たちはこんばんはと返しつつぴしりと背筋を正す。
「それで、なんのご用でしょう」
主人がそう聞くと、女はこう答える。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その④

「そ、ソラ?」
「はぁ……我らが主さまはこれだから……コイツの手が見えないんですか」
ソラの言葉に男性が改めて少女の右手を見ると、手の中には長さ数㎝の刃が握り込まれており、それは男性の胸元にまさに突き立てられようとしていたところだった。
「なるほどォ? コイツ、まだ呪力が足りてないモンで暴走状態が収まってねーわけだ。言っとくけど私は手伝わないぞ?」
イユの言葉に男性は頷いた。それと同時にソラが少女を押し返すが、少女は飛び退くように躱し、それまで握っていた小さな刃の代わりに刃渡り50㎝ほどの片刃の刀剣を生成した。
「サユリ! その子を止めてくれ!」
「了解です、未熟なマスター」
向かってきたサユリに、少女が斬りつける。サユリは身体を大きく反らせて回避し、刀剣を持っている方の手を掴もうとする。少女はそれを素早く手を引きながら躱し、ついでとばかりに伸ばしてきたサユリの手首を切断した。
「っ……! 速い……」
少女が飛び退き、サユリは呪術師の男性を庇うように位置取りを調整した。
「サユリ。何とかしてあの子に直接触れたいんだ。手伝ってくれるね?」
「……まぁ、マスターはすっ鈍いから、1人じゃあの子に近付く前にナマスにされちゃうのは分かりますけど……たぶん、あたしじゃ抑えられないと思うので、粘っていられるうちにさっさと決めてください」
「ああ、やってみよう」
少女が再び距離を詰めようと駆け出す。その瞬間、突如バランスを崩し勢い良く転倒した。
「あれ……? 足元が、急にゆれた……?」
立ち上がろうとして、再び頽れる。