「…それで、お前の名前はなんなんだ」
ナツィが不意に尋ねたので、金髪のコドモはふぇ?と聞き返す。
ナツィはお前の名前だよと強く言う。
「俺だけ名乗らせといてお前が名乗らないのはないだろ」
だから言え、とナツィは金髪のコドモを睨んだ。
金髪のコドモは…ボク?と自分を指さす。
「ボク…まだ名前ないの」
「は⁇」
テメェとぼけてんじゃねぇぞとナツィは語気を強める。
「お前だって魔力の気配があるから人工精霊なんだろ?」
名前くらいあるはずとナツィは腰に両手を当てる。
しかし金髪のコドモはないものはないの!と言う。
「ボクのマスターがね、あとでって言うから…」
「なんだそりゃ」
ナツィは呆れ顔をする。
金髪のコドモは気にせず続ける。
計算してみよう。
クリスマス当日……いや前日でも良いんだけど、一日中デートするとして、日帰りなら一緒に居られる時間はどれだけ多く見積もっても半日……12時間、13時間を超えれば御の字かな。
それじゃ、当日までの30日、30分ずつくらい貰えばどうなる?
それだけで15時間。ちょっと粘って50分くらいもぎ取れれば、それだけで単純計算で丸一日以上、あいつの人生をいただけるわけだ。
……なーんだ。一世一代の覚悟でお誘いするよりずっとお得じゃない。
駄目だ、笑うな……いやいや、こんな嬉しい発見しておいて、ニマニマするなって方が無理だって。
あいつに見せびらかして、お褒めの言葉を引き出して、何でも無い雑談でもしながらゆっくりお茶したりして、あいつは食べ物の写真撮るタイプじゃないけど、せっかくの私の力作だし、無理にでも記録に残してもらったりしてさ。
うん、そうだな……。
お誘いの文句はできるだけ自然な感じで。如何にも「私とあいつのいつも通り」に。
……そう、切り出し方は例えばこう……。
『シュトーレンが上手く焼けたんだ。』
きみが選んだ道なんだ
上手く行くに決まってる
いつか遠い街で大人になったら
またいつか、思い出せたら
空いたこの胸の空白も
二度と埋まらない隣の席も
きっと来ない再会を夢見て
今もきみと会える日を待っている