「…お前は、ピスケスがどこからか持ってきた人工精霊の“核”から生み出された存在なんだよな」
ナツィは不意にこぼす。
キヲンはポカンとして目をぱちくりさせた。
「それがどうかしたの?」
「いや、元はあの女のモノではなかったんだよなって」
ナツィがそう言うと、キヲンは少し俯く。
「お前は自分を作った“親”に興味ないのか?」
今はあの女にベッタリだけど…とナツィは言いかけて、不意に止める。
いつの間にかキヲンはナツィに抱きつくのをやめていた。
「ボクの“親”は寧依だもん」
キヲンは震える声で呟く。
「今のボクは寧依のものなの‼︎」
キヲンはそう叫ぶと、バッとナツィたちの元から走り出した。
「ちょっ、待てって」
ナツィは引き止めようとするがキヲンは気にせず駆けていく。
すぐにキヲンの姿は人混みの中に消えてしまった。
「…」
ナツィは思わず沈黙する。
その様子を見ていたかすみと露夏も呆然としていた。
吹雪の結界の中、【雪城】を操る魔法少女、チヒロは雪の中に息を潜めていた。
(……あの“カミラ”って怪人……『上位怪人』だ。しかも、マズいな……魔法が『喰われる』)
彼女のすぐ横を、カミラが通り抜ける。カミラが彼女に気付くことは無かったが、チヒロは慌てて距離を取る。
(あいつに触れると、魔法が吸収される。私は殴り合いは下手だし……となると、背後から奇襲とか?)
ふと、チヒロの感覚が結界への何者かの侵入を感知した。
(……誰だ?)
カミラもまた、その気配に気付いたようで、気配のする方に向けて飛んでいく。
気配の正体が目視可能なほどに接近したところで、カミラはニタリと微笑み、その相手に声を掛けた。
「あぁー、ひさしぶりぃ」
「あっ、怪人! いた!」
「カミラだよぉ」
「えっ、あっ、私はヒトエっていいます」
「よろしくねぇ」
「あっはい……」
ヒトエが答えるより早く、カミラは接敵し、右手の爪を振るう。ヒトエは積雪に足を取られながらも、転がるようにして回避した。
「危ないでしょぉ!?」
カミラは悲鳴をあげるヒトエを見て、腹を抱えてきゃっきゃと笑う。
「すごぉ……よけるじゃん」
「そりゃ避けるでしょ……」
再びカミラが襲い掛かる。防御しようと双剣を構えたヒトエを、魔法によって気配を消していたチヒロが背後から抱きかかえ、そのまま倒れ込むように姿を消した。
なんでいきてるのか
目的を探し始めたら終わる
続く日々をそつなくこなして
考えないように体を動かす
意志と無関係に旅は続く
最低限の荷物だけ持って
再出発を試みる夕暮れ
心を置いていこう
体だけで充分
残る足跡は
何故か軽やかに