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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑰

ササキアが反射的に盾を構え直したのとほぼ同時に、『繭』の壁に亀裂が入った。亀裂は深く広く拡大していき、遂に一部が破壊され、その穴から外界の様子が見えるようになった。
「壊した!」
ニファンダの声。
「くぁちゃん、破られた!」
ボンビクスの呼びかけ。
「任せろ!」
ロノミアが“破城”を振るう。ササキアの盾の前に、ニファンダはほぼ反射的に『空間支配能力』によって、不可視の障壁を展開していた。
その『障壁』と大盾に、“破城”が衝突した。

――“破城”。ロノミア・オブリクァの固有魔法によって生成される『刀』の一振り。そして、その全ての『銘』には、能力に基づく意義がある。
『破城槌』という兵器が存在する。これは城壁や城門を衝突により破壊することを目的としたものであり、“破城”の銘もまた、これに由来するのだ。
“破城”の有する能力は、『防御の破壊』。その強度や特性とは無関係に、ただ『防御の意思』を感知し、強制的にそれを破壊するということこそ、“破城”の特殊効果なのだ。

刃は不可視の障壁に触れた瞬間、『空間の歪み』であるはずのそれを粉砕した。その勢いは衰える事無く大盾に直撃し、抵抗なく破壊した。
「なん……ッ!」
咄嗟に腕で受けようとしたササキアだったが、その動作をボンビクスの糸が妨げる。
結果として、ノーガードのササキアを“破城”の刃が捉えた。ササキアは衝撃を受けながらも後方に向けて跳躍したため、致命傷は回避したものの、“破城”の威力も相まって大きく弾き飛ばされ、ニファンダを巻き込んで後方数m、校舎の壁に激突した。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑲

「姉ちゃんがアイドルになってから、親は姉ちゃんのことでつきっきりで…」
ぼくの事なんて心配してくれなかった、と琳くんはうつむく。
「それに周りの皆は『姉ちゃんはすごいのに、弟は』って比べてばっかで…」
誰も見てくれなかったんだ、と琳くんは震える声で続ける。
「だから姉ちゃんとはできるだけ関わりたくなかったんだ」
それなのに、と琳くんは両手で顔を覆う。
「今日はZIRCON結成2周年ライブだからって、親が無理矢理ぼくを連れ出して…」
琳くんはそう言って肩を震わせる。
暫しの間わたし達は静かに彼の姿を見ていたが、ふと師郎が…じゃあと呟いた。
「何でその姉ちゃんのグッズを持っているんだ?」
琳くんは…え、と顔を上げる。
「姉ちゃんに劣等感を抱いて関わりたくないと思うなら、そのキーホルダーを持ち歩かなきゃ良いんじゃねぇか⁇」
師郎は琳くんの目を見る。
琳くんは思わず目の前のテーブルの上に置いた濃いピンク色のキーホルダーを見やった。