「もうすぐZIRCONの単独フリーライブが始まるだろ?」
始めからみたいならさっさと行った方がいいぜ、と師郎は琳くんに笑いかける。
彼の有無を言わさぬ雰囲気に押されて、琳くんは…うんとうなずく。
そして彼はイスから立ち上がると、休憩スペースの後方にある階段へと向かった。
「あら、逃げるの?」
逃さないわよ?と言ってヴァンピレスは自身の周りに分身を生み出す。
すると彼女の分身の内の1体が、琳くんが去っていった方に駆け出した。
しかしその分身に向かって黒い大鎌が飛んできて直撃する。
分身は大鎌と共に消滅した。
「…わらわの邪魔をするの?」
ヴァンピレスは腹立たしげに首を傾げて目を細め、分身たちと共に右手の中に白い鞭の具象体を出す。
「あぁ、そうさ」
アンタに同族の邪魔をされるワケにはいかねぇんだよ!とネロは両目を赤紫色に光らせ、その右手に黒い大鎌を出した。
そしてネクロマンサーは大鎌でヴァンピレスに斬りかかる。
しかしヴァンピレスの周りの分身たちがネクロマンサーの前に立ちはだかり、白い鞭でネクロマンサーの斬撃を妨害する。
ネクロマンサーは一旦飛び下がり、大鎌を構え直しつつわたし達においアンタら‼と声をかけた。
「早くあの琳を追え!」
アイツを1人にしたら危ない‼とネクロマンサーはこちらを見つつ言う。
耀平は分かった‼と答えると、行くぞ!とわたし達の方を見る。
わたし達はそれぞれうなずくと、荷物を持ってその場を離れた。
・破城(ハジョウ):全長3m超の斬馬刀。攻撃対象の『防御の意思』に反応し、その防御を破壊する。
・幽鱗(ユウリン):全長90㎝程度の日本刀。刀身の損傷を、表面だけが割れるように剥がれることで完全に修復する。修復の度に刀身自体の耐久力が少しずつ落ちていくので、実質的に修復が使えるのは50回程度。
・血籠(チゴモリ):赤い刀身を持った全長85㎝程度の日本刀。使用者の血液を媒体にして、深紅の流体が刀身の傷を埋める、本質的に不壊の刀。流体の生成効率は、消費した血液の10倍程度。
・異称刀“稚児守”(イショウトウ:チゴモリ):“血籠”の別側面。使用者より年齢の低い者を守る際、刀の耐久力と使用者の身体能力が更に向上する。
・緋薙躯(ヒナギク):赤い刀身を持った全長80㎝程度の日本刀。直刀だが刀身にうねるような刃紋が刻まれている。刀身を自在に伸縮・変形させられる。
・異称刀:否凪駆(イショウトウ:ヒナギク):“緋薙躯”の別側面。この刀を振るった場合、完全に振り抜くまでその斬撃は止まらない。”否凪駆”の能力使用中は、刀身の変形効果は使えない。
・癖馬(クセウマ):奇妙な形状の刀身をもった刀。刃渡り75㎝程度、全長100㎝強。その形状と刀身の密度の僅かな差から、一度振るうと標的を捉えるまで遠心力によって無限に、不規則に回転し続け、速度と威力を増していく。制御は極めて困難であり、十分に勢いの乗った刀身の挙動を読むことは不可能に等しい。
ササキア・カロンダ
Sasakia charonda(オオムラサキ)
年齢:17 身長:168㎝
固有魔法:『実力』に『評判』を上乗せする
メディウムの魔法:変身、身体強化、耐久力強化、追加武装、自己回復
説明:甜花学園生徒会会長。自己鍛錬を怠らず、道徳と規律を遵守し、学園生徒からの信頼も篤い。まさしく『正義の人』。その才覚は学園外にも知られているが、本人は自身の魔法を「地味な魔法で、決して大したものでは無い。もっと強い、凄い魔法少女は学園にたくさんいる」と認識している。謙虚な態度も大人気。
ニファンダ・フスカ
Niphanda fusca(クロシジミ)
年齢:16 身長:158㎝
固有魔法:時間と空間を掌握する
メディウムの魔法:変身、発光体の生成
説明:甜花学園の生徒。高等部2年。時空間を自在に支配するという『最強』と呼んで差し支えない魔法を有する『規格外』であり、自身の魔法を恐ろしいものだと認識しているので、普段はあまり使いたがらない。メディウムに封じた魔法は、掌大の光る球体を生成するもの。懐中電灯代わりに便利。趣味は友達の部屋でのお泊り。
エウメタ・ジャポニカ
Eumeta japonica(オオミノガ)
年齢:11 身長:144㎝
固有魔法:『無』を生成する
メディウムの魔法:変身、望遠、魔法障壁展開
説明:甜花学園初等部6年の児童。誕生日は3月中旬。モリヤマ双子の友達。固有魔法は視界範囲内に『無』を生み出すもの。『無』とは真空の上位互換のようなものであり、周囲の空間や物質、エネルギーなど全ての事物は、空間を埋めるために『無』へと引き込まれる。ブラックホールの遠い親戚みたいなものだと思えば何となくのノリとしてはまあまあ合ってる。甜花学園の次代を担うことを期待された『規格外』の1人。
※甜花学園:強力な固有魔法を扱う『規格外』を集め、一か所に隔離することを目的とした学園。圧倒的な強さを保持することで、有事の際の秘密兵器としての運用を期待されており、総務局との繋がりも強い。ネットでその他の学園から叩かれてそう。
ちなみに過去にいた『規格外』の魔法には、時間移動や強力な召喚獣の使役、透過能力や単純な超高火力攻撃など色々ある。
甜花学園襲撃の翌日、ボンビクスとアンテレアは、友人のエウメタ・ジャポニカを連れてロノミアとの『秘密基地』にやって来ていた。
「へー、ここがモリちゃんとマイちゃんの秘密基地?」
「そうだよー」
「くぁちゃんはもう来ないから、私たちだけの秘密基地なのー」
「くぁちゃん……あ、いつも話してる二人の師匠さん? どうしたの?」
「くぁちゃんはね、魔法がおしまいになったんだって」
「へー」
適当な段差に腰を下ろし、エウメタが口を開いた。
「そういえば、昨日うちの学園に、襲撃が来たんだって。危ないからって、初等部の私たちは早めに帰されちゃった」
「あっ、それくぁちゃんだよ」
ボンビクスがさらりと言う。
「え? じゃあ、あの中等部の校舎真っ二つにしたのも?」
「そうだよ、すごいでしょ!」
「生徒会長さんも倒したんだよ!」
双子が自慢げに胸を張る。
「すごーい! あの人、負けるってことがあり得るんだぁ……で、お師匠さんは今は?」
「総務局に怒られてるの」
「私たちも一緒にいたんだけど、私たちは無罪になったんだって」
「へー、なんで?」
「「さぁ……」」
その後も3人は、他愛も無い世間話をして過ごした。
「あ、そういえば」
ボンビクスが不意に口にする。
「どしたの?」
エウメタの問いかけに、双子はピースサインを向けた。
「私たち、中等部から甜花学園に通うことになったから、よろしくね?」
その言葉に、エウメタは目を輝かせた。
「えっ本当? やったぁ!」
「4月からよろしくねぇ、メタちゃん」
「今から楽しみー」
「うん! 二人ともよろしくね!」
暗がりに水が滴り落ちる音がする、それをかき消すように2つの小さな足音が響いていた。
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ…」
「ここまで来てそれはなしだろ」
魔法学園レピドプテラの地下下水道、入るのを禁じられたその場所の最深部にあった扉の前にリョウとレイナは立っていた。
「行くって言ったのはレイナだろ?それにほら、多分僕たちでもこの結界は解除できるぜ」
「そんなことある?私達まだ1年生だよ?」
「まぁまぁ、とりあえずやってみるぞ」
二人は扉に向けて手をかざす、扉が怪しく光り輝き真ん中が回転して何かが外れる音がした。
「ウソ…」
「な?言ったろ?」
リョウは満面の笑顔で扉を押す、するとそれなりに響く音を立てながら開いた。
「お宝かなんかあれば面白いんだけどな」
「あっまってリョウ!」
二人は扉の向こうに駆け出した。
そこそこ長い道を抜けると広いところに出た。
「何だここ?下水を溜めとくってところか?」
「り…リョウ…あれ…!」
レイナが指差す方を見ると大きな瓶のようなモノの中に一人の大男が正座していた。
「な…なんだよコイツ…!」
「や…やっぱり帰らない?これは…私たちは関わっちゃダメなやつじゃないかな」
「き…奇遇だな…僕も今そう思ったところだよ…うわっ!」
リョウが何かにつまずいて尻もちをつく、と同時に振動で何かが噛み合ったような音がした。
「…これ…やばいんじゃ…」
大きな瓶の中に光が灯る、その光が部屋の中のあらゆる所に循環して歯車が動き出した。