今年も冬が来た。
気付けば暦も12月にさしかかり、街路樹の葉も落ちて道行く人々の服装も厚着になってきた。
学校も学期末テストの時期が近付き学生たちは焦り始めるし、今年もあとわずかという事で大人達も心なしか慌ただしい。
この1年も、とうとう終わりがくるのだ。
そんな中、わたし達はのん気に商店街の裏路地を歩いていた。
「もう今年も終わるなー」
「受験も近付いてるなぁ」
いつもの駄菓子屋に向かいながら、耀平と師郎はそう話す。
「そう言えば、黎と師郎は受験大丈夫なの?」
ふとわたし達の前を歩くネロが、後ろを向きつつそう尋ねる。
それに対し師郎はまー大丈夫だよと笑う。
「黎は頭いいし、俺はなんとかなる」
「師郎の方が心配だな」
師郎の言葉に対し耀平がそう言うと、わたし達は思わず明るく笑った。
…と、ここで耀平が駄菓子屋を前に足を止める。
クミの案内で3人が辿り着いたのは、路地裏の隙間に隠れるように置かれた、地下入口だった。
「ここ」
クミに言われてカズアリウスがインターホンを探す。
「あいてる」
その言葉に、カズアリウスがノブに手を掛けると、扉はあっさりと開いた。屋内は何かの機械や骨董品が並んでおり、照明もついておらず陰鬱な空気を醸している。
「本当にここなのか? そもそも人住んでんのか?」
カズアリウスが呟きながら中に入ると、天井の方からスピーカー越しの音声が降ってきた。
『お客様かい?』
男声のようである。3人のアヴェスが突然の出来事に動揺していると、クミがサルペンタリウスの腕の中で声を上げた。
「んーん、お友達!」
彼女の答えに反応するように、暗い廊下の奥に小さく明かりが灯る。長方形のそれは、どうやらエレベーターのようであった。
『入って来てもらいなさい。』
それだけ言うと、ノイズが途切れ、スピーカーからの通信は終了したようだった。
クミがエレベーターを指差し、サルペンタリウスを見上げる。
「はやくー」
3人は顔を見合わせ、しばしの逡巡の後、意を決してエレベーターに進入した。
4人が入ると同時に扉が閉まり、エレベーターは自動で下降を開始する。
そして約1分後、エレベーターが重い金属音を立てて停止した。