「耀平?」
他の皆も足を止める中、わたしはつい彼に聞く。
耀平はあの人…と駄菓子屋の店先で品物を眺めている男の人に目をやる。
あの人?とわたし達が不思議がった時、その男の人がわたし達に気付いたようにこちらを見た。
「霞(かすむ)?」
耀平が思わずそう呟いた時、その人は、もしかして、耀平くん?と驚いた顔をした。
耀平はぱっと笑顔を見せると、彼の元へ霞~!と駆け出した。
「久しぶり~‼」
元気してた⁇と耀平は彼に近寄りつつ声をかける。
霞と呼ばれた男の人は、うん、元気してたよーと笑った。
「ねぇ耀平」
だぁれこの人?とネロが耀平に近付きながら訪ねると、耀平はあぁと振り向く。
「彼は雨水 霞(うすい かすむ)」
おれが小さい時に近所に住んでた年上の友達、と耀平は彼を紹介した。
「へー」
ネロはそううなずく。
僕は、深海魚。壁という名の暗闇を泳いでいる。
出口の無い迷路をただ彷徨っている。
でも僕、今は地上に出たくないんです。
なぜなら、また自分自身で居られなくなるかもしれないから…
日々の日課を終え疲れた夜。部屋の隅で一人で泣いていた。
テレビの向こうで踊っているヒーローたちが
僕には眩しすぎて。
「そのまま夢に向かって真っ直ぐ突き進むぞ」
と言ってた僕は、
いつのまにか、純粋さを無くした。
そして何もしなくなったし、目指さなくなった…
(続く…)