「えーすごいじゃーんれーいー」
ネロはそう言って黎にくっつく。
黎は静かにネロの頭を撫でた。
一方それを見る耀平は少し不服そうな顔をしている。
「お、耀平嫉妬してる?」
ネロがかわいくて仕方ないんだな~?と師郎はそんな耀平の肩に手を置く。
すると、そ、そんな訳ないしと耀平はその手を払った。
その様子を見て霞さんはふふふと笑うが、ここでわたしはさっき思ったことを思い出し、彼に尋ねる。
「…そういえば、霞さんって異能力者だったんですね」
わたし、全然気付かなかったです、とわたしが言うと、霞さんはまぁねと頭をかく。
「君が一般人だから言わなかったけど、ネロちゃんが堂々と異能力を使っているのを見て大丈夫だと思ったからさ」
だからあの通り使ったんだ、と霞さんは一瞬両目を菫色に光らせた。
「ちなみに僕のもう1つの名前は”オウリュウ”だよ」
霞さんの言葉に対し、わたしはそうなんですねと答えた。
「…まぁ、そんなことは置いといて」
そろそろ駅へ向かおうぜ、と師郎が手を叩いてわたし達の注目を集める。
「そろそろ霞も帰らなきゃだろ?」
師郎がそう言うと、霞さんはそうだねとうなずく。
わたしと黎もうなずき、ネロは耀平に近付き、行こうよーと彼の腕を引っ張る。
耀平はちょっと不満そうな顔をしていたが、うんとうなずくと駅に向かって歩き出した。
辺りはもうすっかり日が暮れ切っていた。
〈23.オウリュウ おわり〉
「今年はしっかり運動会あるんだね···」
友だちの声に苦笑いを返す
去年、一昨年はコロナウイルスのせいで運動会ができなくて、2年ぶりの実施。
「嬉しいような、面倒くさいような···」
「でも紅白まおと一緒じゃん。リレーも一緒だといいね」
「今日決まるんだっけ?」
「知らん人ばっかりとか地獄だから〜」
どうでもいい話をしながら体育館に向かう
身長順に並ぶとリレーメンバーの書かれたプリントが配られた。
「まお!見てみて!ゆうとくん(仮名)といっしょだよ 」
彼女はゆうとくんが好きだったのだ
「え、まじで?おめでと~てか私も一緒だよ」
「ガチじゃん最高」
さあ、リレーが楽しみになってきた