「それは、もう仲間を失いたくないからだよ」
ロディの言葉にアカは目を見開く。ロディは気にせず続けた。
「ロディたちのカテルヴァにはね、前にルベ……エリサクス ルべクラっていう仲間がいたんだ」
「でもある戦闘で死んじゃってさ」とロディは俯く。
「ルべと仲良しだったトログはすごくショックを受けちゃったし、リーダーのクリスはそのことで自分を責めるようになってしまった」
「だから」とロディは顔を上げた。
「ロディたち、アカが新しく仲間になるって聞いたとき、約束したんだ」
「ルべみたいにはしないって」とロディは笑う。アカはなにも言えずに黙り込んでいたが、それを見たモザは「まぁ、そういうことだ」とアカに歩み寄った。
「つまるところ、おいらたちはお前に死んでほしくない」
「人が死ぬのは、誰だって嫌だろ?」とモザはアカに近付き手を差し伸べる。アカは驚いたような顔をしたが、モザが「ほら」と促すとアカはその手を取った。
「さーて、こっからどうすっかね」
アカの腕をぐいと引っ張って立ち上がらせたモザは、上空のアリエヌスの群れを見上げて呟く。アリエヌスたちは他のカテルヴァの攻撃によって要塞都市への襲来を阻まれていたが、群れの中心にいる親玉アリエヌスにはどのカテルヴァのアヴェスも近付けていないようだった。
「⁈」
アカが驚く間に、突然誰かが飛び込んできて彼を抱える。そしてその誰かは一気に飛行してその場を離れた。
アカは何が起きているのか分からず混乱するが、自身を抱えて飛ぶ誰かがアリエヌスの群れから少し離れたところに着地したところで、やっと自分を抱えているのが誰かを判別することができた。
「お前は……」
アカは自身を天蓋の上に降ろす浅黒い肌のアヴェス——モザの顔を見てそう呟く。モザはなにか言いたげな顔をしたが、そこへ「モーザーっ!」と元気な声が響いた。
「やったねー!」
「ロディが落下速度を変えたお陰でアカをキャッチできた‼︎」と黒と桃色のジャケットを着たアヴェス——ロディが嬉しそうにモザとアカの元へ飛び込んでくる。モザは「ロディお前ホントに大丈夫なのか?」と腰に手を当てた。
「物体の落下速度を変えるって相当現実離れしてるぞ?」
「身体に影響とか出てないのか?」とモザはロディの顔を覗き込む。するとロディは照れくさそうに「ちょっとめまいするかも」と答え、モザは「おい」と突っ込んだ。
「お前いくら身体が丈夫だからって無理はすんなよ」
「えー、仲間の大ピンチだったんだし〜」
「もっと自分のこと大事にしろ!」
モザとロディが言い合う中、その場に座り込んでいたアカは「……なぁ」と2人に声をかける。モザとロディは「?」とアカの方を見やった。
「なんで、自分のこと……助けてくれたんだ?」
「あんな風にアリエヌスの群れに突貫したのに」とアカはこぼす。モザとロディは思わず顔を見合わせたが、やがて2人はアカの方に目をやった。
僕らのstarlight。
真夏の暑さはやってくる。
蛍の光。蝉はジリジリ。
君との明日はやってくる?