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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 サマーエンカウンター ⑧

「それで、なんで初対面のおれたちを家に上げてくれたの?」
不意に少女の左隣に座る少年が尋ねてきたので、自分はついびくつく。
「それは…やっぱり外は暑いし、ずっと玄関先で人と話し込んでると近所の目が、うん」
自分が頑張って絞り出した言葉に対し、少年はふーんとうなずいた。
「…ねぇ、こっちからも質問なんだけど、なんで自分の家の場所が分かったの?」
初対面だし住んでる場所も全然知らないはずだよね…と自分が聞くと、ロヴィンとじゃれていた少女が、あーそれはねとこちらに目を向ける。
「こういう事」
そう言うや否や、少女はパッと両目を赤紫色に光らせた。
「ボクの異能力、”ネクロマンサー”とこの人の異能力”コマイヌ”でアンタが辿った軌跡を見たんだ」
ねー?と少女が隣に座る少年を左肘で小突くと、少年はまぁなと答えて瞳を黄金色に光らせる。
自分は思わず目をぱちくりさせた。
「まーアンタもボクらと同族なんだからさ、そんなに驚く事もないよ」
少女は目を光らせるのをやめつつ笑う。
少年も異能力を使うのをやめるが、自分は未だにポカンとしていた。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑯

「……蒼依ちゃん」
鬼の様子を注視したまま、冰華が小声で呼びかける。
「何」
「多節棍って使える?」
「何いきなり。まあ三節棍ならよく使うけど……」
「3も5も同じだよね」
「そうかなぁ……なんで5?」
「蒼依ちゃん、手ぇ握って?」
「ん」
蒼依が冰華の右手首を掴むと、冰華は両腕を水平に上げながら、蒼依から離れるようにステップを踏んだ。それに合わせてずるり、と彼女の腕が抜け、両腕が繋がった奇妙な身体器官が蒼依の手の中に残った。
「うっわナニコレ気持ち悪っ」
「私の腕! 武器にして良いよ!」
「いや武器ならあるんだけど……まあ良いや」
蒼依は『腕』の両前腕部を持ち、軽く振り回しながら手応えを確認する。
(節が2つ増えただけで、一気に扱いにくくなるな……柔らかいせいで絶妙に握りにくいし……まぁ、やってみようか)
蒼依が『右前腕』節を掴み、反対側の先端を叩きつけるように振るう。鬼は大きく後方に跳躍し、蒼依から大きく距離を取った。そして態勢が整うより早く再び前方に駆け出そうとして、バランスを崩して地面に倒れ込む。
(……また躱された)
蒼依は内心で舌打ちしながら、鬼の背後を見る。そこに立っていたのは、人形型に戻った“奇混人形”だった。短槍状態から人形型に変化し直し、密かに接近していたのだ。
“奇混人形”は鬼が転倒したために羽交い絞めに失敗し、素早く回り込むような軌道で蒼依の隣に戻ってきた。
(まあ、何とかして当てるけど)
蒼依が鬼を指差すと、“奇混人形”は小さく頷き駆け出した。人形は再び鬼の背後に回り込み、蒼依と共に鬼を挟撃する形を取る。