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磨羯造物茶会 Act 23

露夏が歳乃の元に連絡してから数分。
午後の陽の差す路地裏を、ナツィは黒い翼を広げて宙を滑るように飛行していた。
先程カプリコルヌスに追い詰められかけた時に、術式を組み込んだ短剣から撃ち出した火球に魔力を極端に込めたことで意図的にそれを暴発させて煙幕を生成し、それでカプリコルヌスの視界を封じてその場から逃げ出したのだ。
とはいえ、カプリコルヌスとの戦いで身体のあちこちを痛めているのは確かで、なんとか飛行はできているものの空中で体勢を維持するので精一杯である。
また、路地裏ゆえ上に電線が何本も存在するせいで下手に空高く舞い上がることができず、あまり速度も上げられない。
かなりの速さで今にも追いつかんばかりに飛行し、追跡するカプリコルヌスをかわすのは至難の業だった。
「っ!」
不意にナツィに向けてカプリコルヌスがなにかを投げつけたので、ナツィは慌ててそれを避ける。
一体なにを…とナツィが思ったとき、不意に身体が重くなった。
なにが起きたのか分からず地面に落下するナツィは慌てて翼を動かすが、飛び続けることができずそのまま地上に落下してしまった。

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毎日

久しぶりに、とここに書く回数が増えた

毎日が淡々と過ぎていく
課題をこなすだけの今日がやって来る
「この後、学校で何しよう」と考える暇もなく
90分間の授業に拘束される日々が続いている

中学生の頃の生活が既に懐かしい
ケータイを握りしめて
好きな人からのメールを待った
ダサいと言いながらも皆で同じ体操服を着て
クラスの旗を囲んで集合写真を撮った体育祭
たった15分の劇に数ヶ月を捧げた文化祭
この前、久しぶりに行った中学校には
おままごとみたいな空間が広がっていた
どこか大人になりきれない、「守られている」世界があった

ここで過ごした青春を絶対に忘れたくないと思った
人間関係に悩んだ時、お世話になった保健室
進路が決めきれず先生と話し続けた進路指導室
理想の音楽に向き合った部室
転校するあの子と最後に話した下駄箱前
好きな人とふたりで過ごした朝の教室
あの時日常だと思っていた毎日は、
振り返るときらきらと輝いている
あの子が、クラスメートが、先生が、あの人が、だんだんとあの頃のことを忘れていったとしても
自分だけは、忘れずにいたい

それは今も同じことであって
この無機質な毎日が、数年後、数十年後には
戻りたくなる「あの頃」になるかもしれない
だからこそ、今を大切に
心だけでも、ときめいていたいと思うのです