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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑨

しかしそんな中でも、黎はどこか霞さんから見えない所に隠れようとしている。
それに気付く度に霞さんは黎に話しかけようとしていたが、黎自身はその都度そっぽを向いて無視していた。
わたしはその事が気になっていたが、ネロ、耀平、師郎にとっては気になる事でもないらしく、あまり意識していないようだった。
「そういえば、星羅(せいら)ちゃんは? 元気してる?」
「あー妹? 元気してるよ~」
霞さんと耀平がベンチに座って楽しく会話し、耀平の隣でネロがゲームセンターで取ったぬいぐるみを抱えて話を聞いている。
そのベンチの隣のベンチで、わたし、師郎、黎は座って彼らの様子を眺めていた。
「耀平と霞さん、本当に仲良いよね」
わたしが何気なくそう呟くと、ま、そうだなと師郎が返す。
「耀平は意外と交友関係が広いし」
こんな風に古い友達と話し込むのも無理はない、と師郎は腕を組む。
わたしはふーんとうなずきつつ、師郎の右隣に座る黎の方を見やった。
黎は師郎の陰に隠れるように、彼にくっついている。