「お、お前ら」
コドモ…露夏がそう呟くと、交番の入り口に立つ2人組のうちの片方であるゴスファッションのコドモ…ナツィが、おいと声をかける。
「なにやってんだよ」
「なにやってって、それはこっちのセリフ」
「早く帰んぞ」
「えっ、なんで」
「早く帰る!」
押し問答のような会話に痺れを切らしたナツィはつい声を荒げた。
それを見てそばに立つジャンパースカート姿のコドモ…かすみは、な、ナツィ…と宥めようとする。
「そんなに大きい声を出したら、眠らせたお巡りさんたちが起きちゃうよ…」
「かすみ、俺が使った魔術なんだから心配はいらない」
「えっ、そっち?」
ナツィの謎の自信にかすみはポカンとするが、気にせずナツィは露夏に目を向けた。
「帰るぞ…ピスケスからの命令だ」
「!」
その言葉に露夏はハッとすると、すぐにイスから立ち上がって交番の入り口に立つナツィたちの元へ向かった。
深夜、ひと気のない大きな駅の前にて。
ターミナル駅とはいえ終電も出てがらんとした駅の近くにある交番で、2人の警察官とイスに座ったキャップ帽を目深に被っているコドモが言い合いをしていた。
「だーかーら! おれはお巡りさんに保護される筋合いはないんだし‼︎」
「そんなこと言ったって君、まだ中学生くらいじゃないか」
こんな夜中にほっつき歩いていたら危ないよ、と見るからに中年の警官はコドモに注意する。
しかしコドモは、おれそんなに弱くねーし!と悪態をつく。
「第一、おれはおじさんたちの思うような“コドモ”じゃないんだし、そろそろ解放してくれよ!」
「いーや、保護者の方が迎えに来るまでここで待つんだ」
「頭かてーなお巡りさんは」
「そういう口は利かない方がいいぞ君」
コドモと警官がそう言い合う中、そのやり取りを見ていた若い警官が不意に背後でなにかの割れるような音を聞いた。
「?」
若い警官が何気なく振り向くと辺りは妙な匂いのする白っぽい煙に包まれ、2人の警官はなす術なく気を失う。
コドモは突然の出来事に驚きつつ赤い上着の袖口で口元を押さえるが、やがて晴れた煙の向こう…交番の入り口に見覚えのある2人組の姿を見とめた。