今のわたしが此処にいるのは あの日の君がいたからなの 宙に舞ったさくらも 眩しいくらいの若葉も あかときいろに染まった落ち葉も 踏めばきゅっきゅと音をたてて笑う 真っ白な雪の絨毯も 幸せを教えてくれたのは いつだって君だった ありがとうの言い方を教えてくれた さよならの言い方を覚えなきゃいけなかった 愛しすぎて吐き気がするような 嫌悪をまるごと抱きしめたいような 閃光のように瞬く記憶は 今でもわたしの細胞の中で ひっそり確かに息をしている
あなたのことが好きでしたと云うことばが過去のものになる時のことを考えないようにして生きていた 昨日も今日も 写真に焼き付けて定期入れに飾れる恋なんてきっと嘘っぱちだとか 強がってるぼくは案外と惚れっぽくて ほら、また雲の浮かんだ空にカメラを向けている 恋と愛の違いを教えて。
あなたの瞼が シャッターを切るように閉じるとき あなたの後頭葉に わたしはどんな顔で映っているのかな へそ曲がりで 素直になれないわたしの手を どうか離さないでいて欲しいのです 上手く言葉に出来ない想いばかり あなたに向けて下書きは募っていくのに 可愛げがなくて 臆病なわたしのことを せめて忘れないでいて欲しいのです
喉が痛くなって 久しぶりに 喉が痛くない日常の有り難みに気付いた わたしに風邪をうつした君は もうすっかり元気になって ほら、言ったとおりだって けたけた笑ってるんでしょう? 君に会えば、 うつされることは容易に予測できたのに 小さな端末の画面の向こう 君の気持ちだけが 分からないまま 熱っぽいのは 脈が少し早いのは きっと君の風邪のせい
笑顔に優る 化粧なし
触れた、優しい手は これから先にはないと知って 無条件で愛してもらった時間を それぞれの身体の中に閉じ込めた 笑うと細くなるその目も 長い睫毛も わたしの名前を呼ぶために動いた唇も 全部が、 心にひりひり痛む爪跡を残したことを きっと貴方は知らないんだね 大人になったその掌で 貴方が抱きしめるものが どうか、 嘘偽りのない幸せでありますように。
手袋を新調して 思い浮かぶのは君のこと お元気ですか、 掌の中、液晶なぞれば いつでも聞けるけど それじゃあダメな気がして 荒れやすいあなたの手が心配なのって そんなことは言えやしないの
半透明な魅力、 見惚れる数秒間 好きだよ、って 今更なのは知ってるよ いつもより色っぽいのは きっとこの季節のせい 艶っぽい唇から 零れ落ちる言葉に 僕は溺れたい
懐かしさに溺れた 甘酸っぱいこの感情を なんて呼ぼう、 なんて呼ぶんだっけ、 知ってるはずなのに 分かってるはずなのに 答えは出したくなくて
おはよう、 とっくにぺしゃんこになっているチューブから 押せばいつまでも歯磨きが出てきて、今日で二週間。 いつまでも続く筈がないのに今日も続いてる ぼくの人生みたいだ なんて、おやすみ