愛されること
一人暮らしをしている僕。
夏になると急によみがえる記憶。
ただの幼なじみが、電話で愛されたいと泣いた日。
ぬるい夜風の中、ギターをかついで待ち合わせの公園まで走ったとき。
そのあと枯れたベンチで、ベタな歌詞にのせてベタな音楽でかなわない恋を歌ったとき。
「ベタね」彼女はいった。
「うん」僕は泣きそうになった。
「うんとアホくさい」彼女は笑う。
「うん」泣くな、僕。
「うんとアホくさくて、一生懸命でまぶしくて、くらくらする」
おい泣くなよ僕。面目がまるでたたないじゃないか。
「運命を変えるって、できるのかな。」彼女は遠くを見てつぶやいた。
僕はふときづいた。
いつでも愛されたいのは僕の方だった。