波打ち際の流木を拾い集めるだけでは きっと世界は狭いままなのでしょうけれど ちっぽけな私の両腕には このくらいの海岸が程良いので 私は いつまでも ぼんやり此処で 恵逢ひを待ち続けて 目を凝らすのです
頭が痛いと言えば差し出された肩 お腹が痛いと言えば添えられた掌 雨の日には思い出す 喪ってしまった何もかも 寒さを感じる前に掛けられた毛布 罅割れる暇なんてなかった唇 雨の日には思い出す 喪ってしまった何もかも 雨音に怯える私を包んでくれた温もりを 消さないための剥き出しの腕 粟立つ肌に顰まる眉を想像して 最近は そんな顔ばかりねって笑ってみせた
闇夜に紛れて あいらびゅー 貴殿の大切なものは壊れましたと お悔やみ申し上げられた私めの心には 大切なものなど御座いませんでした そうして呟く あいらびゅー 空っぽな言葉には きっと 沢山のヘリウムが詰まっている 漂った其奴は 浮かんで浮かんでリンネの中へ? 留まって留まって温室効果?
上手に息を継ぐのには 何を捨てたらいいだろか この肩山成す悲しみを 全て捨てたらいいだろか 捨てたところで悲しみは 後から後から伸し掛かる 上手に息を継ぐのには 何を捨てたらいいだろか 悲しみ生み出す喜びを 全て捨てたらいいだろか 捨ててしまえば此の口は 呼吸をすら忘れ果て 忘れ果てれば継ぎ方なんぞ 惑わされずに坐せるのか
親指の疼痛を 握り潰せるようになるということ 強張った顔で それでも笑みを象ってみせるということ のたうつ心を 聖女のベールで覆うということ
縛るが愛の貴方と 離すが愛の私では 寄り添い合う未来など 夢のまた夢でしか在り得ない 貴方が私の為に変わって下さらなければ 私が貴方の為に変わり果ててみせければ だけれど私の為の貴方など 私は一匁も求めちゃいない だけれど貴方の為の私など その何処にも私はいない それならやはり 貴方と私の未来など 望むだけ虚しくなるというもの 鬼すら笑えぬ程の 夢想に過ぎぬというもの
貴方が生きる その意味に 一欠片でも私が含まれていると そう、自惚れていられるうちは 貴方の隣を お赦し戴いても良いですか。
くしゃん、と響いたクシャミに 振り向いた君が顔を顰めて 風邪引くだろって次の瞬間には 君のTシャツのハンバーガーが ぐらぐらと揺らいでいる もうちょっと優しくしてよと 言ったら君は声を低くめて 嫌ならちゃんと拭いてから来いって だってしてもらいたいから 入念に濡らして来るのに、なんて それは痛くされそうだから内緒にしとこうかな?
背が高くて眼鏡で天パ 楽しげに毒吐く薄い唇が 本気で弱っている時には 決して笑わないのを知っている 蔑み色に似た瞳は 本当は地の果てまでも 公平なだけだと知っている 背が高くて眼鏡で天パ 少し冷たい顔立ちが 笑うと甘くなるのが好きだった 神経質そうな尖った声が 和らぐ瞬間が好きだった 背が高くて眼鏡で天パ 冷血の指先と色のない肌 いつでも黒いシャツにスーツ 鞄のセンスは少し変 冗談のつもりの でっち上げのつもりの 勢いで頷いてしまった初恋が じわりじわりと 真実味を帯びてしまって笑えない
毎朝決まって あったかいと頰を包む君に 今日こそ仕返しをしてやろうと思うけど そんなことするまでもなく 身体中が燃えるようだよ