僕の体を傷つけて、 その傷口からにじみ出た歌こそを、 君に聞かせたいんだ。
わたしは わたしの中へ溶けていく わたしは わたしを生かす 理由もなく わたしは決してきみを泳がない ただ きみに溶けたいと思うだけ 水の中の水みたいに けれど きみはいつまでも きみの形 わたしは決してきみといられない でもきみがいなければわたしは 水の中の水みたいに わたしとせかい いつまでも同じ形
黒ずみつつある 僕の心よ 眠らないでおくれ 見えないキッチンから 透き通る水の音だけがしている 静寂に 針をとって 縫い付ける告白に 夜も薄く延びていく…… そうして割れてしまうのは おぼろけな明日の姿
山頂の家に帰る途中 揺らめく田園の海原を抜けて 長い階段の麓 見上げた空に高く入道雲 それを超える飛行機が 空を白く裂いて 蒸し暑さを盗んでいった
街中に木霊する 最後の号令の確かさに 木々も雲も揺れている
海底の貝が泡を吐き出した 電柱はまだ眠っていた 惑星が問いかけた数奇な運命に 混淆することのなかった色が立ち止まって 見上げた先に紫の月 (電柱の先に二羽の烏が止まった)
ふわふわ電車に乗ったように 窓の向こうの日常を見てる 私の力じゃ開かない扉の向こう ほら 流れていった
枯らした花瓶は机に置いたんだ いつものディナーはなしにしようか ボウルには ただ 夢
僕は、息をする。息をするように。 運命ね。 パズルの一ピース、海に放したような朝。 僕も、君もまだ、充たされない。 そんな答えがいいね。 そうね、いっぱいじゃ終わってしまうわ。 暖かさも、柔らかさも。 この悲しみさえ、消えてしまうの。 運命、ね。 私には、この雪の朝だけあればいいの。 君を待っているわ。その先で。