呪い願い愛
「また失敗か……」
異臭を発する薬品が出来たのはこれで何回目だろうか。数えきれないほどの失敗を繰り返して、何年経っただろうか。
……この身に呪いを受けるのは、何回目だろうか。
* * *
最初の呪いは、人の声。
僕のことを化物だと恐れ、悲痛に叫ぶ声。鱗に覆われた体を見てそう思うのは、仕方がないとは思うけれど。必要のなかった呪いは僕の心を蝕んだ。
そんな時に、君は現れたんだ。
僕のことを見ても恐れることなく、無邪気に笑いかけてくれたんだ。
あれから君は、毎日のように声をかけてくれた。小さかった君が成長して、大きくなって、白髪も生えて、しわくちゃの手で僕の手を握ってくれるまで。動けなくなってしまうまで。
* * *
痛む呪いは、別に気にならない。
君が動かなくなったあの日から、君以上の傷も、君が笑ってくれない以上の呪いも、存在しないのだから。
さあ、また薬を作ろう。
君のことをもう一度笑わせてみせるから。
僕は君の死体に向けて微笑む。