LOST MEMORIES 438
ベルガモットに加えて、レモンとオレンジの香りが部屋に広がる。その原因の隣には、金塊に似た小さな台形。つかの間のティータイムである。
「チャールズの淹れてくれたお茶を飲むのって、なんだか久しぶりじゃないかな。」
ほっと息をつくと、瑛瑠はそんなことを言う。
チャールズも白いカップを手にして、相槌を打った。
「最近はプロのところへばかり行ってしまって、舌が肥えてしまっていますからね。あまり淹れたくないのです。」
そう言って微笑う。
確かに最近は『Dandelion』を筆頭に、カフェに通っていた節がある。
「安心して。チャールズは十分お茶淹れのプロだから。」
若干放り投げるように言う。
チャールズは面白そうに笑う。
「言いますね、お嬢さま。」
「口の達者な付き人がすぐ傍にいるもので。」
小さくフィナンシェを頬張ると、優しい甘さが、柔らかく口に広がった。
そして、ほのかに残っていたレディグレイの香りが、ふんわりとした焼き菓子に、優しい風味をまとわせたのだった。