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「私」の十年後

夏のダラダラとした空気より、冬の張り詰めたような、深く澄んでいる空気が好きだ。
冬が似合う彼は今、何を見ているのだろう。
あの時のこと、覚えているかな。
もしかしたら、私が隣にいることだってできたかもって、引きずっていた時期もあったけど、今はもう吹っ切れた。
あとになってこの想いに気づくなんて、幼い自分にとっては残酷過ぎた。
まだ子供だった私は、壊れた思い出を直せなくて、縛られていた記憶を捨てれなかった。

だけど、私は。

あの時の私は。

[私]を生きていたのだ。[私]として笑って、泣いて、恋をして、成功を学んで、失敗を知って。
きっと今の私は疲れてしまっていたのだ。
[私]でいたいから、[私]らしく生きたいから。
その言葉に縛られていたいた。
記憶に縛られていたのは今の私のほうだった。
あの時の、幼かった自分に対して、悔しかった。
目の前の[今]だけを、ただ生きていた自分が。

私も。

まだ変われるのか。

気づいてしまえば、すごく呆気ない。
今から家に帰って荷造りをしたら、明日の始発に間に合うだろう。
いや、帰る必要なんてない。
財布と、家の鍵と、スマホさえあればなんとかなる。有給は溜まってるし、大きな企画は一段落ついてる。
適当にバスに乗って、行き先を決めずに移動して、何をするわけでもなくのんびりして。
上司の連絡はバスに乗ってからでいいや。
大丈夫、なんとかなるよ、楽しんでおいで。
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ミセス先生の楽曲「私」をもとに、自分で想像しました。
ポエムかどうかはわからないですが、これが今の自分の全力です。