いつになく甘えた声のきみ 結わえた青いリボンを解き ギンガムチェックをなぞり ほっそりとした脚に足絡め 交わした約束を軽々と破る このまま溺れてもいいかな
水槽の中で泳がされていた私を 先に出た君が見つめている 君は嬉しそうにクルクル回っている 君も水槽の中にいたんだ だったら、私も………… 少しの勇気と憧れを髪飾りにして 私は水槽から出て バランスが取れずよろける私を 君は笑っていた
窓から差し込む煌き 細長い道筋に導かれ つま先立ちで進めば 君の背中が見え隠れ もう少しで逢えるよ 歩 歩 歩 歩 嬉 そっと廊下を歩いた
おおきな音とともに ⋆ 君の瞳の色が変わる ⋆ ⋆ 映りこんだ大輪の花 ⋆ ⋆ ⋆ そこに僕が加わって ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ 三日月みたく細める ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ 幸福で胸が痛むんだ
あたたかい何かが頬を伝い 交わしたカーマイン濡らす 刻んだ記憶と己のベクトル 22世紀から手を振ってる もっともっとと求める信条 また新しい何かが始まるの けれど目は覚めてしまった
時は満ち満ちて 哀しいけど惜別 餞に愛を贈れり 比翼連理の戯れ 案外その程度で 適当に生き延ぶ ほらご覧なさい 落ちよ君たちよ
水面に浮かぶ月を両手で掬って ちいさな瓶にそっと閉じ込める 睫毛の重みの分だけ星を数えて 遠慮がちにひとつまみだけ貰う わたしはひとりぼっちじゃない ここで待っていれば迎えが来る 予定は未定でも確定事項だから きっとそれがどんなに辛くても
剝き出しの敵意に齧りつく 頑張ってねと言われたから わたしは精一杯頑張ったよ 歪んだ口角見て見ぬふりで 眩いひかりだけ追い求めた でももうわかっちゃったよ 転んだ拍子にわかったから 「もういいよ」って言って
焦げ臭さを纏ったキッチンの空気が ぼくをすっかり包み込んでしまって 暴れまわる油たちにアブラカタブラ どうしたってこうしたって出来ない きみがいた頃の体温にもう戻れない 唸ったぼくを見上げてパチパチパチ 唐揚げは羽をはやして瞳を潤ませた
腫れぼったい皮を剥いで 溜めこんだ雫は限界集落 堕ちても墜ちても深い沼 いちごジャムは嫌いなの どろりと落っこちた愛執 哀愁漂わせながら告げる ずっとあなたに寄り添う