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近代文学好きが語る近代文学 其の一 芥川龍之介「歯車」

反応をいただけたので、初めての作品紹介をしようと思います。
反応をくださった皆様、ありがとうございました。

記念すべき第一回は芥川龍之介「歯車」を紹介しようと思います。
私が芥川龍之介の作品の中で一番衝撃を受けたものです。

芥川龍之介はその一生を自殺という形で終えます。芥川龍之介が残した最後の小説、それが歯車です。
芥川龍之介は何故自殺したのか。自殺の寸前、何を考えていたのか。そんなものに読者が迫ることのできる作品です。

主人公は「僕」。芥川龍之介自身がモデルとなっている作品です。
視界に半透明の歯車が見える主人公が、東京の街をさまよい歩く。言ってしまえばただそれだけの作品。あらすじに起こすのが不可能に近い作品です。
視界に半透明の歯車が見える、この時点で何だかあやしく不気味ですよね。
この作品には芥川龍之介が抱えていた狂気、不安、そんなものを垣間見ることができます。

視界に半透明の歯車が見えるという現象、これが作中の芥川龍之介自身の狂気と混ざり合った時、読者に何とも言えない不気味さと不安を与えます。

芥川龍之介は晩年、己が発狂してしまうのではないかという不安に苛まれていたようです。
それは作中でもドッベルゲンガーの存在や視界に映る半透明の歯車によって巧に表現されています。

特に衝撃的なのは、最後の一文。
最後の一文を読んだときに感じる興奮、恐怖。それらはもう一度「歯車」を読みたいと思わせてしまいます。

芥川龍之介が発狂しそうな不安と狂気の狭間で書き上げた、「歯車」。
私はこの小説を芥川龍之介の最高傑作だと思っています。

中編であまり難しい言い回しはないので読みやすく、「羅生門」や「蜘蛛の糸」、「トロッコ」で作り上げられた芥川龍之介のイメージが覆される一作です。
下のリンクから電子で全文読めますので、気になる方は是非読んでみてください。

ここまで「歯車」について語ってきましたが、どうだったでしょうか。
少しは作品の魅力が伝わったでしょうか?
質問などお気軽にどうぞ!