ほんとは気づいてるんじゃないでしょうか もし、あなたが気づいていたら、 言の葉ひとつくらいくれてもいいじゃないですか ああ、でも、 もし聞いてしまったら、 きっと、私は動けなくなると思うの
あの時、 一瞬でも、 ふたり一緒にいた事実が、 私を淡く溶かしていく。
あなたに愛されないから、 夜に抱きしめてもらうの。 夜は毎日違う顔をしてる。 優しい夜にも、冷たい夜にも抱きしめてもらった。 でもね、あなたほど綺麗な夜には出会えなかった。
あなたまで、いなくなってしまうのは嫌だよ。 最後まで一緒だと思ってた。 まだ時間があると思って、まだ伝えてなかった。 気づけば、あたりまえにあなたと会って、話して。 あたりまえは、もう、逃げていく。 どうしても、伝えたい。 でも、私は弱いから、きっとここでしか言えないの。 好き。
花びらが、顔を赤くして揺れている。 もうすぐ、離れる頃です。 風が吹くと、ドキドキして。 まだしがみついていたいような、新しいものを探しに行きたいような。 気持ちも一緒に揺れています。
あなたがいなくなった夜は、さらさらと雪が落ちていた。 それは徐々に増えていき、私の前に幕を下ろした。 しばらくして、雪がふわりと舞うようになった。 あなたはもう、そこにはいなかった。 溜息をひとつ、雪が飛ぶ。 冷たい空気を思いきり吸って、吐いた。 雪は私の温度で溶けただろうか。
ぬいぐるみを抱きしめて、心にはない柔らかさを求めている。 ずっと、縋っているだけ。 なのに、温かい気がした。
本物の愛はどこにあるのかもわからずに、 秩序という枠の中に感情をはめていく。 柔軟剤の香りはわるくないけれど、 そこに本物は見当たらないのと同じこと。 本物を名乗っていてもからっぽなものは、 ずっとそばにいても、 温かくはないのね。
放たれて、走り出す。 あの向こうへ手を伸ばして、 君に届きたいんだ。
自分が消えてなくなってしまうのが怖いんじゃなかった。 君が私より先に消えてなくなってしまうのが怖いんだよ。