ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 8.イービルウルフ ⑩
「俺の異能力との違いは、異能力の効果範囲を指定できるかどうかと、声まで変えられるかどうか、だな」
師郎はそう付け足す。
「俺の異能力は、効果が及ぶ人間を指定する必要があるけど、稲荷のにはその必要がない」
でも効果が及ぶ範囲を広げたり狭めたりはできねえんだ、と師郎は言う。
「あと、私の異能力は日暮のと違って声までは化けられないの」
化けられるのは見た目だけ、と稲荷さんは笑った。
わたしはへぇ、とうなずく。
「この通り、似たような異能力だから、小学生の頃から互いに競り合ってきたの」
「今んとこ5勝5敗だけどな」
稲荷さんの発言に、師郎はそう付け足した。
「とにかく」
ここで耀平は2人の顔を見た。
「対決さっさと始めよーぜ」
それを聞いた2人はそれぞれ、そうねとかそうだなと言った。