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sumika Live Tour 2022-2023 「Ten to Ten」大阪初日②

一度座るように促され、片岡さんが切り出した話はsumika[camp session]についてだった。目を凝らしてステージを見ていると、見覚えのあるカホン、そして黒田さんが持っていたものはアコースティックギターだった。先程までのセットとは一風変わったものに変更し、ミニアルバム『Sugar Salt Pepper Green』のオープニングを飾る「知らない誰か」の他に「アネモネ」「春風」と続いた。

再び暗転したステージにはただ一人、片岡さんがポロンポロンと音を奏で、Aメロを歌い始めたと思った刹那、声出しが可能になったライブに感動したあまり、声が裏返ってしまったのだ。Take 2となった「ファンファーレ」は夜を駆け出していく様子を爽快に綴った。

一万一千近い人がサビを歌い上げた「ソーダ」「Flower」を歌い上げ、「The Flag Song」は眩くて細い光が何本も重なり、ステージ全体が深紅の海に包まれた。

合いの手が特徴的な「イナヅマ」、歓声が地を鳴らした「Shake&Shake」、区切りを告げるための歌「Lost Found.」、心の言葉を言い表す様子を描いた「言葉と心」で本編は幕を閉じた。

アンコールの拍手の喝采が降り注ぎ、再び演奏が始まった。
「フィクション」「雨天決行」「伝言歌」の三曲は彼らの音楽人生を表すのには必要不可欠なピースだった。

そしてラストのMCでは、脳に響き渡る深くて優しい片岡さんの言葉は糜爛な私の心を包み込み、とめどなく溢れる大粒の涙は抑えることなど出来るわけでもなく、頬を伝ってマスクにしみをつけていった。

自分なんてこの世から消えてしまえば良いのかもしれない、そう思った事も少なくはなかった。しかし、sumikaを信じれば必ず傷は瘡蓋へと変化する、と無意識のうちに全細胞が脳へ信号を出し続けた結果、ライブ当日までの約三ヶ月間の学校生活を頑張れたのだ。

「私は、sumikaの音楽、ライブ、バンド全てを愛している。」

たった一つの事実が今回の公演によって形成され、私の将来の夢を建築する頑丈な核となった。誰に何を言われようとも、この事は絶対に揺るがせない、守りきりたいのだ。ライブの余韻が明白に浮き出てきた頃、sumikaの音楽を自ら届けていく存在になりたいと紺色に染められた空に強く誓った。

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sumika Live Tour 2022-2023 「Ten to Ten」大阪初日レポート①

起きたばかりの鉛のように重たい瞼を動かした視線の先には見慣れた字で「人生初ワンマンライブ」と大きく記された卓上カレンダー、用意周到に準備したリュック。それらは私の頬を緩ませるのには十分な材料だった。

予定通りに当日限定カラーのタオルを購入し、たくさんの人で溢れる大阪城ホールの座席に座った。17時4分、照明が暗転するのを筆頭に開演の合図がした。手始めにと言わんばかりに空恐ろしい灰色と白色の照明はステージを照らし、会場全体にシンバルの音が響いた。

一曲目は自身4枚目となるフルアルバム『For.』の先頭を彩った「New World」はVo.Gt.の片岡健太さんが鋭利な歌詞を力強く歌い上げ、間奏ではDr.Cho.の荒井智之さんのドラムソロは会場を奮い立たせた。

間髪を入れずに「Glitter」の意気揚々としたメロディはジェットコースターに乗っているような新鮮な感覚にさせた。

三曲目に移る前、「大阪、もっといけるよな!新しいものを見せてくれ!」と片岡さんの掛け声が表していたものは、sumikaの音楽の醍醐味である「合いの手」だった。約三年前、突如として得体の知れない病疫が猛威を振るわせ、今までに声を出せなかったからこそ俺たちに伝えてくれ、という強い気持ちは「ふっかつのじゅもん」で拡張された。

韻を踏んでいる歌詞が特徴的な「何者」、代表曲とも言える「Lovers」はアウトロのリズムでGt.Cho.の黒田隼ノ介さんと片岡さんの左足がシンクロしていて、自然と笑みが溢れた。

五曲を突っ走り、ここでMCを挟んだ。
「今日を一番にできるように歌います!」一言一言を丁寧に紡ぐ片岡さんの姿を言葉で表すならば誠心誠意と言えるだろう。

更にギアを上げるように告げた「10時の方角」、Key.Cho.の小川貴之さんが歌い上げた「イコール」はメンバー、そしてお客さんの歌声によって血色を増し、付かず離れずのもどかしい幼馴染のような関係の距離を伝える「いいのに」。そして、純粋無垢で曲がり角一つない愛を描く「透明」はそれ以外何も要らない、何も濁さず透き通った状態で伝えたいだけ。その「ただひとつだけ」の大切さが痛烈に染み渡った。