胸の霧が晴れない まだ覚めない夢の中の 地面に足がつかないような そこに見えるのに届かないだけだと ちっぽけな悩みだと笑うだろうか まだ書けないこの思いを 綴る日は来るのかと悩む
「お久しぶりです」 一挙手一投足に舞う振袖の君が言うそれは “大人になったよ”という合言葉だ。 「綺麗だね」 僕はわざと返さなかった。 君が少し照れる仕草。化粧の奥に見えるその目は5年前と変わらぬあどけなさを覗かせる。 「…髪いいねそれ」 照れながらもそう言える君はやっぱり大人だね。 「染めた、似合ってる?」 今の僕はこれが精一杯だ。 もうちょっと大人になって今度は僕の意志で逢いに行くんだ。そして会って言うんだ。 「お久しぶりです」 それが僕なりの…
新しい「今年」のはじまりに向けて 積み重なる言葉をひそかに胸に留める
お話をつくってみたいものだ、と思う。 とだけひとまず文字に落としてみる。
鼻が赤くなる気温 白い息にまじって雫もすぐに枯れる
出会いたい人に出会えない世界の広さを嘆く頃に 数ヶ月前のあの人の足音がした
自分が書きたいものを書くんだと決めて描く未来はきっと誰も欠けない
雨の音に被せた誰かの泣く声がする 水溜まりに響いた嗚咽を拾う
泣きそうになる日は風が柔らかい
「冬はいちばん星が綺麗に見えるんだよ」 夕方の雰囲気をまとった紺色の空に 少しずつ星がこぼれ落ちていく。