どこへ行こうか 目覚まし時計が騒ぐ頃 この怒りも哀しみも 崩れた公園の砂場の城も それでも見たい未来、成したい夢 はち切れそうな心臓を手の中に どこへ行こうか ただただ大きいだけのトランクを この小さすぎて弱々しい身体を 持って、走って、ゆっくり 行こう ただ君の匂いがする方へ行こう 嘘に嘘を塗り固めて作ったケーキを みんなで分けて食べよう それで笑ってサヨナラしよう
旧くなった春をいつまでも タオルケットみたいに抱いて眠る 干からびた海を歩く 鯨の骨に腰をおろして 味のしない月を一口かじる 黄昏れられる景色はどこにもない 文明も恋も砂がすべて呑み込んで 古くなったタオルケット 母のぬくもりとおもかげ抱いて 眠る、春はまた新しく訪れる
時を纏う透明が漂い 像を得ようと青へもがいてみる
生温い乳白色の空気 綺麗でいて濁っていて寂しかった ひとり取り残された13時
ジミもジャニスも生きたあの歳までは生きるよと嘯きながらロックスターにもなれなかったぼくの詩が いつか誰かの胸にやわらかな花を咲かせる日を夢みている。 おやすみを囁くように 夕焼け空をそっと指さすように 街角の風を吸い込んだ香りを集めて ことばにならないことばをならべて 風にとけて逃げ去る詩を描きたい 街にきえて惜しまれない詩を描きたい
あけすけな嘘で君の朝を盗んで 銀色カマキリの間、僕らゆこう 駅の数だけ離れてく「いつも」から 君の涙を取り戻しにきたんだよ
おはようが白くうかんできえた朝 日陰がきっぱりと凍りついたまま 足音も吐息もひんやり吸い込んだ ほんとうに、冬だ。 心待ちにはされず、募られもせず ある朝おもてに佇んでいた 冬がもう居座って帰らない 冬がもう始まって終わらない
つまった鼻が すーっと通るような 雨の前の風 書きかけの手紙は その雨で滲ませればいい 「届けたい言葉」とか 口では立派だけど ようするに抱きしめたい 単純な欲求だよな 毛布をかけるみたいに わたしを思い出して 水を飲むように ぼくを見つけ出して 天気雨みたいにイタズラな 滴りまくってるBMG
月が落とした四分音符を ぷかあと夜空にふかしたら 浮かんだケムリに巻かれた星が 瞬くのをやめたげな
無重力の前髪 はりきれドライヤー 弱音は吐くな