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雑談3

哲人「つまりなにか、君は彼よりも君の方がしたことの重さが少ないのだから許されてしかるべきだ、と」
青年「だってそうでしょう、彼が私にしたことは私が彼にしたことの何倍もひどいのですよ。それに先にあんな仕打ちをしたのは彼の方です。正当防衛といってもいいくらいで」
哲人「詳しい内容についてはあえて聞かないでおくよ」
青年「喧嘩両成敗なんてもう流行りません。先生はもっとしかるべき判断を下すべきなんです。それなのにあの人は...」
哲人「まあ落ち着いて。確かに、私も『喧嘩両成敗』なんて言葉を使う気はないよ。だがね」
青年「そうでしょう!当然のことです。今さらそんな言葉で彼と私が両方同じくらい悪いのだ、なんて言われてはたまったもんじゃありませんよ!」
哲人「落ち着きなさい。それではある例を出してみよう。ここにコップが二つ、水が満たされて置いてあるとする」
青年「はい」
哲人「右側のコップには1gの毒が入っている。左側には、同じ毒が0.1g入っている。君はどちらを飲むかね?」
青年「そんなのどちらも飲みたくはありませんよ。その毒の致死量がどれくらいだったとしても、毒入りには変わりありません」
哲人「そう、君が言っていることはそういうことなんだ」
青年「......と言うと?」
哲人「君はしたことの罪の重さでその罪を測ろうとしている。そうではない。罪を犯したのか犯していないのかが重要なのだ」
青年「そっ、それはいくらなんでも酷いじゃありませんか!では私が彼に嘘をついて、彼が私に殴りかかって来たとしたら、それも同じく悪いと言うのですか?!」
哲人「その嘘が彼にどれだけ傷を与えたか、どれだけ彼にとって酷いことだったか、君には知るよしもない」
青年「ですがしかし......」
哲人「主観的な立場から人の善悪を判断してはいけない。この話は前にもしなかったかね?」
青年「.........」

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雑談2

哲人「では君は、皆が君にもっと感謝してしかるべきだ、そういうのだね」
青年「その通りです」
哲人「しかし、それを自分で言ってしまってはおしまいではないかね」
青年「そういう話ではありません。誰もやらない仕事を仕方なく私が引き受けているというのに、なにもしない外野がとやかく言うのが我慢ならないのです。」
哲人「ほう、仕方なく、と」
青年「はい。そんなに言うなら自分がやれ、なにもしないくせにつべこべ言うな、と言ってやりたいのです」
哲人「いや、君、それは違うよ」
青年「何が違うのですか。何一つ間違ったことは言っていません」
哲人「確かに、君の言っていることは正論だ、しかし...」
青年「そうです、その通りです!私が言っていることは正論ですよ!」
哲人「まあ待ちたまえ。そう、君の言っていることは正論だ。正論は正しい。ゆえに正論と呼ぶのだ。だがしかし、正論を振りかざすのは正しいと言えるかね?」
青年「.........」
哲人「まあそれは別の話としてもだ。君がその仕事に就くとき、本当に抵抗できないほど強制されたのかね?それとも、誰かに頼まれて、君が言うところの『仕方なく』やっているだけなのかね?」
青年「.........後者です、しかし......」
哲人「もしそうであるなら、君こそとやかく言うことはできない。例え断ることができない状況だと君が判断したのだとしても、今の状況を選んだのは、他の誰でもない君なのだ」
青年「そうですがしかし......」
哲人「家族を人質にとられて人を殺したのだとしても、殺人をおかしたのはその人だろう?」
青年「...そ、それは極論ですよ!」
哲人「確かに極論かもしれない。だがね。君が言っているのはそう言うことなのだよ。わかるかい?」
青年「.........」

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オセロ

「寒い?」
「ううん。」
「暑い?」
「何もわからない。君って誰?」
「僕にもわからない。でも、僕と君はよく似てる」
「なんで分かるの?君は自分の顔がわかるの?」
「わかるよ。この部屋にはないけど、僕は鏡を見たことがある」
「カガミ?」
「知らない?世界を映してくれるもの」
「わからない。でも、いいものなんだね。カガミがあれば世界を見渡せるんだもの。」
「うーん…ちょっと違うかな。でもひとつ言えるのは、鏡に映る自分は左右反対の顔をしてる。」
「反対に映るの?」
「そうだよ。」
「じゃあカガミは嘘つきだね。」
「そうでもない。今見えてるものだけが正解ではないし。その気になれば正解なんてクルクルひっくり返せるからね」
「オセロみたいに?」
「そう。周りが黒になれば黒になるし、白になれば白になるんだ」
「オセロみたいだ!」
「そうだね。でも本当は、黒と白意外にもいろんな色があるんだよ」
「へぇ…君の世界はいいね。いろんな色が見えて。」
「そうかもね。ところで、この黒の白の薬は何?」
「わからない。でも。ほんとに黒と白かな?」
「さぁね。モノクロだからわからない。もしかしたら紺とピンクかも。茶色と黄色かもね」
「やっぱり、君の世界は羨ましいな。いろんな色が楽しめて」
「見たくない色も沢山あるんだけどね。」
「ねぇ。オセロ、する?」