名前に「桜」の字が入っていたことだけ思い出して 記憶の中のあなたは花びらの瞼を閉じて
だらしなく蹴伸びした足は白く 何も成し得なかった日々を物語る 汚れた網戸の向こうでは 深さを増してきた空が 青々と純度を上げてゆく 首を振るエースと壊れかけの扇風機 同じ暑さなのにこうも価値が違うかね
認められたい 褒められたい 泣き虫少女が大暴れ そんなあなたはいらないの 乱暴に蓋をした これは私じゃない 言い聞かせて、何度でも 笑顔の裏には 誰もいない
最近、声が出ません でも、誰とも話さないから 大丈夫です。 最近、部屋に籠りきり でも、誰も気がつかないから 大丈夫です。 最近、やたら生きるのが辛いです でも、誰にも必要とされてないから 大丈夫です。
大粒の雨が降り注ぐ 傘をささなきゃ 体が濡れていく 教科書が読めない 海のような水溜まり 溺れてしまいそう 小さな箱の中 泡が静かに揺らいでく
壁当てでできたドット柄が やがて黒一面になる前に 君の参戦を心待ちにしている
未来を手のひらに映した カスミソウが咲いていた 地図もない中を歩いた 野原はどこまでも広がっていた さわさわと風は游いだ n eedless to say そこは空虚だった いつかそこへ行くのでしょうと まだ辿り着かない未来を想った 透き通る空の青は かすかに涙の色をしていた 手のひらを閉じた、 いつか辿り着ける日のことを想った。
うさぎは月にいないと科学者たちは言う。 僕も事実が好きだし、大事にしたい。 だけど、夢は夢でいさせてほしい。 その先がどうとか、前がどうとか関係なく、夢であることで少しわくわくできる。 うさぎがいなかったら世界が変わるわけじゃない。 でも、僕の気分が変わる。 そんな些細なことは僕の2番目くらいに大事なことだ。
健康診断 余命を告げる神との問診 カルテ片手に腸内パトロール 終わりまでのゼンマイが静かに巻かれる キーンコーンカーンコーン 来月までに体重落としましょう 来月までに血圧落としましょう 来月までに病院へ行きましょう やってくるのは天使か死神か
地球が記録した心電図みたいな波打ち際を 君は走り抜けていく いっぱい生きろ 息をあらげて 心臓を鳴らして 君が放つ全ての音も 光も 海も この惑星も 総ては波形で それは つまり 命だ