LOST MEMORIES CⅩⅥ
神殿まで、そう距離は遠くない。王宮から見える位置にある。
「神殿は、今お兄ちゃんが行っているところと繋がっているのよ。」
果てしなく続くような白の上で、母が少女に話す。
「会える?」
繋ぐ手の先の母を見上げる。そんな少女に優しく微笑んで首を振る。
「いいえ、会えるのはお花が咲く頃とお話ししたでしょう?」
少女は拗ねてしまった。
母は、パプリ,と呼び掛ける。
「今、あなたのお兄ちゃんが行っている場所は、神殿以外にいくつかの扉と繋がっているの。その扉の前に立つことができるのは決められた者だけだから、本当の扉ではないけれど、神殿の中にはその複製が置かれているのよ。あなたも見たことがあるでしょう?」
大きいものね,とくすくす笑う。少女は通い慣れた神殿の中にあった、いくつもの木の枠のようなものを思い出す。
「あの……木のやつ?」
「ええ、そうよ。」