ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 8.イービルウルフ ⑮
「…」
その後も何度も歩いては振り向き、歩いては振り向き…を繰り返していたが、別に何も起きなかった。
「…」
ずっと何かの気配がついて来るのは、不気味で仕方ない。
わたしは嫌になって思わず走り出した。
すると気配もわたしに合わせてついて来る。
「何なのよ…」
そう呟いた時、背後で誰かが芝生に倒れ込むような音がした。
わたしは思わず振り向く。
「!」
わたしの数メートル後方で、複雑に髪を結った少女が倒れていた。
「…え?」
意外な人物だったので、わたしは近付きながらついそんな声を上げてしまった。
少女はゆっくりと立ち上がる。
「バレてしまったわね」
少女はそう言ってスカートに付いた汚れを払った。