深夜の迷子 宵
せんちゃんに手を引かれ、歩きだすこと10ちょっと。不意にせんちゃんが振り向いた。
「…そういえば、怪我とかしてない?腹減ってない?」
ゆずは「えっ」と声をあげ、困惑して目を逸らす。
「えっと、」
ぐるるる…次の言葉を続けようとしたとき、お腹が鳴った。
「…お腹空いた」
「なにか食べるか…食い物持ってくる」
「んーん、それは大丈夫!お菓子持ってるの」
「そか。じゃあとりあえずそこで食べな」
せんちゃんに誘導されるまま脇道に逸れ、ゆずはちょこんと座りこむ。
お菓子を取り出しつつ、ちらっとせんちゃんを見上げると、鋭い視線で辺りを見回していた。
「…せんちゃん?」
せんちゃんがゆずを見下ろす。その目に先ほどの鋭さはない。
「んっ?」
「…いや、なんか怖い表情してたから…」
「それは…気にすることないよ」
「そう?」
不審に思いながら、お菓子を口に運ぶ。
_その一口と、せんちゃんの手がゆずの腕を掴むのは同時だった。