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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑥

種枚さんと白神さんは、自分が鎌鼬くんと出会ったあの場所まで入っていき、そこでしばらく何か言葉を交わしていたようだった。
いつ入っていったものか、そもそも割り込んで良いものか。そんなことを考えていると、突然種枚さんの姿が消えた。
そして一瞬の後、白神さんの斜め後ろに倒れ込むようにして現れた。普段の種枚さんからは想像もできない、まるで走っている途中で躓いて転んだみたいな……。
「……ああクソ、キツいなコレ……。熱なら平気なんだが、電気か?」
「いやぁ、実はわたし、静電気を結構溜め込みやすい体質でして」
「へえ、特異体質どうし、お前が人間なら仲良くできそうだったものを」
「メイさんとしては人間じゃなくても仲良くしてほしいなー、って」
「ハハ、ほざけ」
種枚さんがよろよろと立ち上がり、右手を大きく振りかぶる。以前見せてもらった、遠距離から幽霊を吹き飛ばしたあの技だ。
「触れちゃマズい、ってんならさァ……距離とって殺す技も、揃えてあンのよこっちはァ!」
種枚さんが右腕を振り下ろし、技の余波で白神さんが吹き飛ばされる。
流石に目に見えて問題が起きている以上、もう放ってはおけない。足が半ば勝手に動き出し、自分は二人の方へ駆け寄っていた。
「ちょっと待ってください種枚さん!」
2人の間に割り込むようにして、次の攻撃を放とうと右手を振り上げた種枚さんを制止した。

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑤

落葉の厚く降り積もった地面を踏みながら、種枚は人の目の届かない公園の最奥で立ち止まった。
「……私、この場所好きなんだ。落葉って踏んでると楽しいだろ?」
「わぁ感性が幼児」
「うっさい」
「まあ、わたしもこのガサガサの感触は好きだけども」
「お前もじゃねーかシラカミメイ」
2人の会話は、何でも無い雑談から始まった。
「あ、そういやシラカミィ」
「何だいねクサビラさん」
「お前、歳はいくつだい?」
2人の周囲の空気が張り詰める。
「んー? メイさんは大学1年生だから、お酒も飲めないピチピチの19歳ですよー」
「嘘が下手糞だな」
2人の放つ殺気が一層色濃くなる。
「……ウソとは?」
「人に化けられる『妖怪』が、たった2桁の年齢なわけ無エだろうがよ。なァ、“雷獣”?」
「ありゃりゃ…………バレちゃってましたかー」
「ああ、一目見て分かった。なんでそんな奴がただの人間の『お友達』なんかやってンだ?」
「……人外は人間と友情を育んじゃ駄目だと思ってる派の人?」
「まあ、そうだね。人間の居場所に踏み込んだ奴らは全員死んじまえと思ってるよ」
「荒っぽいなぁ……。じゃあわたしも?」
「察しが良くて助かるよ」
種枚の姿が消えた。

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悪霊の指揮者

榛名千ユリ(ハルナ・チユリ)
年齢:青葉とタメ  性別:女性  身長:145㎝前後
好きなもの:家族、自分、悪霊、飴
嫌いなもの:反抗的な無能、調子に乗ってる無能、身の程を弁えない無能、果汁入りの飴
悪霊遣いの少女。両手の十指に1体ずつ悪霊を封じ、その霊体と霊障を自在に操る能力を持っている。当然霊感もある。現在の手持ちは右手親指に封じた無数の手の霊“草分”、右手中指に封じた大鎧と刀で武装した武者の霊“野武士”、右手小指に封じた暗紫色の炎を纏った左眼だけ嵌まった頭蓋骨の霊“邪視”、左手薬指に封じた身長約2.4mの女性霊“私の愛しいエイト・フィート”の4体。
家族が大好きで心の底から尊敬している。特に名付け親でもあり、霊感があることから経験してきた様々な怪異の話を寝物語として語ってくれた母方のお祖母ちゃんには滅茶苦茶懐いている。“私の愛しいエイト・フィート”もお祖母ちゃんの因縁から受け継いだもの。
家族が大好きなので、家族から血や縁や名や才や姿やその他様々なものを受け継いで生まれ育ってきた自分の事も大好き。
そこまでは良いのだが、家族愛が過ぎて自分の認めた相手以外のことは見下しているところがある。
以上の理由で性格はきわめて悪い。他人と会話する時高確率で罵倒か軽蔑か軽視が含まれてる。教師や大人相手でも態度が変わらねえってんだから大したものです。
普段から身に付けているウエストポーチには、飴ちゃんが大量に入っている。その理由については彼女曰く「アタシは軍師だから頭たくさん使うの」とのこと。他人に分けてくれることはほぼ無い。
ちなみに名前の「ユリ」の部分だけ片仮名なのは「千百合」だと「せんひゃくごう」と区別がつきにくいと思ったお祖母ちゃんの意思。千ユリ本人はちょっと変わっているので気に入っている。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Girls Duet その③

エベルソルが口を開く。するとその奥から、無数のぬらぬらとした質感の触手が伸びてきた。理宇はスティックでそれらを叩き落としながら、少しずつ距離を詰めていく。
(ロキ先輩の弾幕は、タマモ先輩のと違って自由に曲がるから、私が壁になってても大丈夫なはず。こいつの意識を、私だけに集中させるんだ!)
僅か2mほどの位置まで接近し、両足を踏ん張って触手の撃墜を続ける。その隙に、ロキが生成したインキの光弾が回り込むようにしてエベルソルの胴体に命中していく。
光弾のうち1発が深くエベルソルに突き刺さり、体内に到達した。
その穴を押し広げるようにして、体内から更に大量の細い触手が伸び上がり、理宇に襲い掛かる。
「えっ、待っ」
突然倍化した攻撃に動揺しながらも、理宇は冷静に防御を続ける。
「……リウ」
不意に、ロキが呼びかけた。
「えっ、先ぱ、うわぁっ⁉」
そちらに一瞬意識が割かれたためか、あるいは単純な注意不足のためか、足下に忍び寄っていた1本の触手に対応できず、左足首を絡め取られ高く逆さ吊りにされてしまった。
「わあぁっ⁉ ろ、ロキ先輩、助けっあああああ⁉」
エベルソルは理宇を大きく振り回し、レースゲームの筐体に向けて投げつけた。
「リウ、無事?」
「っ……がっ、はぁっ……はぁっ……! ど、どうにか……って、うわあっ!」
理宇に再び向かってきた無数の触手を転がりながら回避し、ゲームの筐体の隙間を駆け抜けた。