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ロジカル・シンキング その②

「ヒオちゃーん、機嫌直したらー?」
街の上空を飛びながら、ヘイローは腕の中のヒオに話しかけた。
「……別に、元から機嫌悪くなんて」
「いやぁそれは無理があるよヒオちゃぁん……ヒオちゃんは感情が態度に出やすいんだから。で? 何があったの? 勉強上手く行ってない?」
「いやそれは普通について行けてるけど。フウリこそ大丈夫? 高校行ける?」
「流石に大丈夫だよ……私を何だと思ってるの。この間の模試でも偏差値60だったんだからね」
「そりゃ良かった」
「……で、なんでそんなに不機嫌なの?」
話題を戻され、ヒオは押し黙ってしまった。
「むぅ……困ったな…………じゃ、『はい』か『いいえ』で答えられるような質問だけするから、頷くなり首振るなりしてくれれば良いよ」
ヒオは無言で頷いた。
「えっとそれじゃ……ヒオちゃんが悩んでるのって、人間関係に関わること?」
「………………ぃや、あぁー……んー…………」
「微妙な反応だなぁ……じゃ、ヒオちゃん自身についてのこと?」
「…………」
一瞬固まったのち、ヒオが僅かに頷く。
「そっか。じゃぁ私は力になれないかもね……」
その言葉に、ヒオは首を横に振った。
「ん? …………まあ良いや。それじゃあさ、話したくなったら話してよ。ヒオちゃんには頼れる仲間が3人もいるうえに、そのうち1人は3年連続同じクラスな、大親友の同級生なんだからさ」
「……分かった」
ヒオを彼女の自宅前に下ろし、ヘイローは再び飛び立ち帰路についた。

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五行怪異世巡『天狗』 その⑦

その場に取り残された青葉はしばらく呆然としていたが、突然吹いてきた強風に身を震わせ、すぐに刀を構え、周囲に注意を払い始めた。
「わぁ、あの化け物だけがいなくなった、好都合だね」
周囲に天狗の声が響き渡る。
「お前はどうもただの人間みたいだな。その程度なら軽いもんだ!」
天狗がそう言うのと同時に、地鳴りのような音が青葉に迫る。
(何だ……? また『天狗倒し』か? いや……)
音源の方向を探し、青葉は周囲を見回す。そして、背後から迫っているものに気付いた。
それは、彼女の背丈ほどの直径はあろうかという巨大な火球。山肌を転がり落ちてくるそれを、青葉は転げるようにしてどうにか回避する。火球はそのまま転がり続け、倒木に衝突して消えた。
(たしか…………『天狗火』!)
続けて転がってくるもう一つの火球を回避しながら、青葉は背負っていたリュックを素早く地面に投げ捨てた。
更に自分に向かってくる天狗火を冷静に回避し、天狗の姿が無いか、周囲を見回す。
不意に、視界の隅で何かが動いた。すばやくそちらに納刀状態のままの刀を向ける。
その正体は、天狗火の直撃によって根元を破壊され、青葉に向けて倒れ込んでくる枯木だった。

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ロジカル・シンキング その①

全高約7mにもなる大型怪人の拳を回避しつつ、格闘家風の長身の魔法少女【ドゥレッツァ】は大通りを駆けながら怪人を誘導していた。
「うおっ危なっ」
正中線を捉える一撃を受け流し、ドゥレッツァは魔法を発動する。怪人の腕を横合いから弾いた衝撃が、一瞬遅れて爆発的に膨れ上がり、怪人は反動で体勢を崩した。
「……ジャストタイミング」
うつ伏せに倒れ込んだ怪人の身体は、大通りを横切る道路にはみ出していた。その道路を、直径2mほどの光線が通過する。光線が止んだ後には、上半身を消し飛ばされた怪人が倒れていた。
「ふぅ……助かりました、先輩」
光線の飛んできた方に顔を向ける。天使のような姿の魔法少女【ヘイロー】が、ドゥレッツァの近くにふわりと着地した。
「いやいや、良い誘導だったよ、はーちゃん」
「光栄です……疲れたぁ」
2人の元に、魔女風の衣装を纏った魔法少女【フレイムコード】と、学校制服姿の少女が近寄って来た。
「あ、ホタちゃん、ヒオちゃん。街の人たちの避難誘導ありがとね」
変身状態を解除したヘイロー、フウリが2人に向けて手を振った。
「うん、2人も討伐お疲れ様」
変身解除したフレイムコード、ホタルコも片手を軽く挙げて応えた。ヒオは軽く会釈して応じる。
「………………さてと、アレが出てくる前に私はちょっと失礼しようかな。あ、ヒオちゃん借りるね」
フウリは再び変身し、ヒオを背後から抱き締め飛び去った。

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不機嫌なドミネイトレス

百貨店の外壁に突き刺さり暴れる怪物の姿を向かいのビルの屋上に腰掛けて眺めながら、魔法少女は溜め息を吐いていた。
「…………あーあー、また怪物が出たからってパニックになって。そのデパート、4か所しか出入口無いんだからさぁ? もっと冷静に順番守って逃げなきゃ、転んで怪我しちゃうでしょ……あ、ほら見ろ。1人転んだ。ああなると後ろも連鎖しちゃうんだからさぁ…………え、何? 私あんな馬鹿どもを助けなきゃならないの? 警察の皆さんも自衛隊の皆さんも分かってる? 普通の兵器効かないんだよ? 現状私の魔法しか対抗手段無いんだよ? この街一つ分の命を私が握ってるんだよ? 私のモチベがこの街の命運左右してるんだよ? あんな馬鹿ばっか……もっと真面目に生き延びようとしてよ。このままじゃ私、アイツらを助けたくなくなっちゃうよ……」
怪物の身体が完全に百貨店の中に潜り込むのを見届けてから、ようやく少女は重い腰を持ち上げた。
「…………まぁ、まあね。別に死んでほしいわけじゃないしさ。やらなきゃならないことはちゃんとやるよ。けど……」
軽く1歩跳躍して10m以上先の百貨店の外壁に着地し、そのまま怪物が開けた穴から屋内に侵入する。そのフロアにはまだ、逃げ遅れた一般市民が残っており、一部は侵入してきた怪物にスマートフォンを向けている。
「馬鹿と阿呆と無能には、ひとまず退場してもらおうか」
少女が指を鳴らすと、周囲にいた人間や両生類のような外見の怪物の動きがぴたりと止まった。
更に少女が指を軽く振るのに合わせて、人間たちは自動人形のような硬い動きでぐるりと振り向き、階段やエスカレーターに向けて列を乱すこと無く歩いて行き、1人ずつ順番に地上階に向けて避難を進めていった。
「……やっと消えたか。何百人いたんだか…………あー疲れた。もうこれで帰っちゃおっかなー……」
少女の魔法が解けて自由になった怪物が、最後に手近に残っていた彼女の方に顔を向ける。
「ウソウソ。ちゃんと最後までやるからさ。秒でお前片付けて、さっさと帰ろっと」

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魔法少女学園都市:日々鍛錬守護者倶楽部 その④

(……ふーむ、このままじゃあの子ら怪我しちゃうな)
タツタが指を鳴らすと、無数の腕が怪物を拘束した。それとほぼ同時に、サホが教室に駆け込んでくる。
「着いた……って人いる⁉ そこのみんな! 私達が止めるから今のうちに逃げて!」
生徒たちの避難が完了してから、タツタも壁から顔を出す。
「助かった。私が出てったら更にパニックになるところだった」
「……まぁ、タツタちゃんぱっと見幽霊だからねぇ……」
「とにかく、これで邪魔者はもう無し。ということで」
「うん。さっさとこいつをやっつけちゃおうか」
怪物が咆哮をあげ、2人に向かって突進しようとしたところで、タツタの召喚した腕に足を取られ、転倒した。
そこにサホが接近し、スタッフで殴り飛ばし、窓から外に弾き出す。
「なーいすしょっとー。窓壊したけど」
「緊急避難ってことで……じゃ、広いとこまで追い出せたところで」
サホの構えたスタッフにタツタが飛び乗り、スタッフを振り抜く勢いで窓の外へと弾き飛ばす。それによってタツタは怪物に追いつき、空中で生成した腕で捕え、地面に向けて投げ飛ばした。
更に掴んだままの腕を縮めながら自分の身体を怪物の方へ引き寄せ、仰向けに倒された状態の怪物の腹部にドロップキックを命中させる。そこから飛び退くのと同時に、サホの振るった炎の鞭が叩きつけられた。

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日々鍛錬守護者倶楽部 その③

「で、タツタちゃん。何飲む?」
自動販売機の前でサホに尋ねられ、タツタは無言でボタンの1つに指を置いた。
「アイスココアね、りょーかい」
サホが投入口に1枚ずつ小銭を入れ、ボタンが光った瞬間にタツタが押す。
「ごちそーさまですサホさんや」
「うん、まあ負けたからねぇ……」
サホ自身も缶ジュースを購入し、近くに設置されていたベンチに並んで座って一息つく。
2人が飲み物を飲んでいると、離れた場所から爆発音とガラスの割れる音が聞こえてきた。
「敵⁉ 学校の中だよね今の⁉」
「落ち着けサホ」
いつの間にか変身していたタツタが、立ち上がろうとしたサホの肩を掴んで止める。
「〈See Thorough〉」
タツタが空いた片手の上に、霊体の眼球を生成し、音のした方へ飛ばす。壁と天井をすり抜けて飛んでいったそれは、数秒後引き返してきた。
「行くよサホ。怪物だ」
「う、うん!」
サホも変身し、廊下を駆ける。
「サホ、私は直線で行くから」
「え? 了解」
タツタは壁に足を掛け、力を込める。
「〈Walk Through〉」
霊体化した肉体がその壁をすり抜けた。そのまま重力すら無視して、音源の方向へ建材をすり抜けながら一直線で移動する。
最後の壁をすり抜ける直前、一時停止して再び霊体の眼球を飛ばす。その眼球は壁の向こうで暴れる、体長2mほどの怪物を映した。教室の隅には、まだ帰っていない生徒数人が縮こまって震えている。

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五行怪異世巡『天狗』 その⑥

「そっちかァ!」
音のした方に駆け出そうとした種枚を、今度は青葉が制止する。
「待ってください、種枚さん!」
「ア?」
「今の音……多分、何もありませんよ」
「何ィ?」
「そういう怪現象の話を聞いたことがあるんです。天狗の名を冠する怪異の一つです」
「へェ……」
しかし、種枚を止めようとしてそちらに注意を向けたのがいけなかった。
2人の背後から、先ほどより大きな破壊音が聞こえてくる。そちらに2人が目をやると、高さ10mは優に超える大木が、2人に向けて倒れてくるところだった。
「あっははははは! ボクの目の前でのんびりお喋りなんかしてるから! キミらみたいな注意散漫で生意気な子たちには、こうして『実害』をくれてやっているのさ!」
大木が倒れ土煙が巻き起こる中、天狗の楽しそうな笑い声が周囲に響く。
「さてさて、流石に死んだかな? 1人くらいは生きているかな?」
言いながら天狗が姿を現し、少しずつ薄れていく土煙に、スキップでもするかのように軽やかに近付いていく。
大木の倒れ込んだ位置から2mほど離れた位置で立ち止まり、その場で覗き込む。にやけたようなその表情は、すぐに険しいものに変わった。
「……これが『実害』、ねェ? だいぶ舐められたモンだ」
「いや、普通人間は木が倒れてきたら潰されちゃうものですよ」
種枚と青葉の気軽なやり取りが聞こえてくる。土煙が完全に晴れたその場には、倒れてきた木を種枚が片手で軽々受け止めている姿があった。
「くそ、何だよこの人間! 化け物か⁉」
そう吐き捨て、天狗は姿を消した。
「オイオイ何逃げてンだァ⁉ 私とやろうぜ!」
そう吼え、種枚は天狗が逃げていったと思しき方向に駆けて行った。

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日々鍛錬守護者倶楽部 その②

両手持ちのスタッフを構えて近付いてくるサホに対し、タツタは魔法で生成した2本の半透明な青白い腕を飛ばして応戦する。向かってくる2本の腕をスタッフを横薙ぎに一撃で消し飛ばし、勢いを落とすことなく更に突き進む。
タツタはその足下に腕を伸ばし、足を取ろうと試みたが、それは跳躍によって回避され、サホはそのままスタッフを振り上げ、勢い良く振り下ろした。
宝石で装飾されたスタッフの先端がタツタの脳天に直撃する寸前、背後から伸びてきた1対の腕が彼女の首と腰を捉え、後方に引き寄せることで回避させる。
「やっぱり強いなぁ、タツタちゃん」
「私としてはあんたの方が恐ろしいけどね」
「それじゃぁ」
「まだ時間はあることだし」
「「ギアを上げるか」」
タツタは、6対12本の『腕』を生成し、同時多角的にサホに差し向ける。
対するサホはその場でスタッフを横薙ぎに振るう。先端に飾られた宝石の軌跡は炎のエフェクトとしてその場に残り、彼女はそれを掴み新たな武器として『腕』たちを迎撃し始めた。
元々持っていたスタッフと炎の鞭による二刀流で、『腕』は次々と打ち据えられ、消し飛んでいく。タツタも絶え間なく腕を生成し続け、サホの動きを防御に専念させ続ける。
(まだだ…………もっと集中させろ……処理が追い付かなくなるまで、腕を増やしてやる!)
生成される『腕』の本数が、更に倍になる。サホはスタッフの軌道に炎のエフェクトを生成し、それらを壁として防御を続ける。
(…………今!)
「〈Pass Through〉」
足下から地面の下を通して伸ばした2本の『腕』が、地下から透過してサホの両脚を掴む。
「うげぇっ」
『腕』はそのまま彼女の足を引き、仰向けに引き倒した。その身体の上に、タツタが腰を下ろし、無表情でサホの顔を見つめる。
「…………」
「…………私の勝ち」
ニタリと笑い、タツタは魔法の『腕』で音楽の再生を止めた。
「ぬぁー負けたぁー」

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日々鍛錬守護者倶楽部 その①

放課後、学校敷地内の中庭にて、2人の少女が対面していた。
「んじゃ、いつも通りで良いね?」
黒髪の少女、サホが尋ねる。
「オーケイ。じゃ、今日のトラックは……」
ブロンドヘアの少女、タツタがスマートフォンを操作しながら答える。しばらく操作した後、画面をタップするとエレキギターの音が周囲に鳴り響いた。
「うおでっか……音量これで良い?」
「だいじょぶ聞こえるー」
「あいあい。それじゃぁ……」
スマートフォンを壁際に置いてから、再び元の位置に戻る。
「「変身」」
掛け声と同時に、2人の全身を光が包む。
タツタはその服装がノースリーブの白いワンピースに替わり、長髪は艶やかな黒いものに変化する。
「【黒紋章】」
サホの服装は、パステル・ピンクと白を基調とし、リボンで華美に装飾されたロリータ調のものに替わり、髪型は薄黄色のツインテールに変化する。
「【妖精騎士】」
「じゃ、曲が終わる前に当たった方がジュース奢るってことで」
「うん。私パインサイダーね」
「じゃあ私はエナドリ」
「あっ高いの選ぶのズルい!」
「冗談冗談。それじゃ……」
タツタの『魔法』によって生成された半透明の手が、スマートフォンの画面をタップする。音楽の再生が始まったのと同時に、サホは駆け出した。

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マホウショウジョ・リアリティショック キャラクター

・福居路香(フクイ・ミチカ)
性別:女  年齢:まだ12歳  身長:144㎝
中学校に進学したばかりの少女。誕生日は2学期中盤。
部活動は決めていないが、何となく音楽部に入ろうと思っている。良い感じの管楽器をやってみたいが自分と周囲の適性的にドラムセットを叩く未来が確定している。
友人も多く、多趣味で、勉強も決して際立って得意では無いながらも毎日努力してそこそこの成績を維持している、ばちぼこのリア充。
家族や周囲からは愛され適切に褒められて育ってきたので自己肯定感も自己効力感もMAXで、自分の人生を滅茶苦茶価値が高いものとして認識している。子供なんてそれくらいで良いんだよ。

・使い魔
女子中高生を狙って魔法少女にさせようとしてくる謎の生き物。外見は四足歩行の哺乳類をモチーフにしたと思われるぬいぐるみのよう。全高約15㎝。ちっちゃい。色々と適当な甘言を述べて言いくるめまくり、これまでに数十人ほど戦いの道に引きずり込んだ実績がある。その大義はただ、化け物達から世界の平和を守るという一点にのみある。我が行いに一点の曇りなし。全てが正義だ。ちなみに歴代魔法少女たちは4割ほどが無事に成人し、1割が存命かつ未成年です。
ミチカちゃんにプレゼントした髪飾りは、本物の宝石とプラチナが使われている地味にすごいやつ。ミチカちゃんはよくある子供向けの安価な作り物だと思ってる。

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暴精造物茶会 Act 22

「確かピスケスさん所の…」
クロミスが怯えたような顔で言うので、露夏はできるだけフレンドリーに笑いかける。
「あー、まぁおれはピスケスの“狗“って所だね、うん」
きーちゃんがいつもお世話になってまーすと露夏は小さく手を振る。
クロミスはひぇっと震え上がった。
「露夏ちゃん」
とにかくあの子たちを連れてここから逃げよう、とかすみが露夏に話しかける。
露夏はあ、そうだなと答えると、じゃかすみ後は頼んだと怪物の方へ向かった。
「え、ちょっと⁇」
かすみはおろおろしたが、そのことを気にせず露夏は歩いていく。
やがて怪物の目の前で魔力障壁を張っていた青髪のコドモの隣に露夏はやって来た。
「いや〜すごいことになったなぁ〜」
露夏がそう言ってキャップ帽のつばをちょっと上げると、随分のん気ねと青髪のコドモことピスケスは隣の人工精霊に目を向ける。
「うっかりしてたら何も知らない一般人に見られてしまうわ」
ピスケスがそう言うと、そうだなと上空から声が飛んできた。
2人が見上げるとナツィがふわりと舞い降りてきていた。
「今は一般人があまりいない時間帯だからいいが」
昼間だったら大惨事だとナツィは芝生に着地する。
「…ま、とにかくコイツを片付けちゃおうぜ」
コイツ、侵入者と認識した奴を倒さない限り大人しくならないんだろ?と露夏は両腕を後頭部に回す。

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マホウショウジョ・リアリティショック 後編

ぬいぐるみが鬱陶しかったので、再び向き直り、目の前にしゃがみ込む。
「良い? ぬいさん」
「え、何……」
「私はね、今がすっごく楽しいんだよ。友達もたくさんいて、趣味も充実してて、勉強も頑張ってるし。これから多分部活にも入るから、もっと楽しく忙しくなる。そんな私の青春の時間と、仮に『魔法少女』とやらになったとして私が懸けなきゃならない命を、何の対価も無しにあげるわけが無いよね?」
「えっ……と……いや、そう、願い! 魔法少女になれば、何でも1つ願い事が叶うんだ! 君にもあるd」
「たった1つ? 私、自分の命と時間にはもうちょっと価値があるって自負してるんだけどなぁ」
「そ、それじゃあ……」
「ねぇぬいさん。1個だけアドバイスしてあげるね」
立ち上がりながら言う。
「そんなに無償の少年兵が欲しいなら、もっとコンプレックス丸出しの自己肯定感なんか欠片も無いネガティブな子を当たると良いよ。適当に甘い言葉並べて誘いたいならさ」
「うっ…………分かったよ」
思ったよりもあっさり引き下がってくれた。ちょっと意外で思わず振り返る。
「ためになるアドバイスをありがとう、ミチカちゃん。お礼にこれをあげよう」
ぬいぐるみは私に何かを差し出してきた。見たところ、髪飾りみたいだ。
「魔法少女に興味が出たら、それを使って。もちろん、ただのアクセサリとして使ってくれてもきっと君に似合うだろうし」
使って、と言われても……そこまで言うなら使い方まで教えてくれれば良いのに。まあ使うつもりは1ミリも無いけど。
ぬいぐるみは徐に立ち上がり、四足歩行でゆったりとした歩調でどこかへ歩き去っていった。それを見送ってから、もらった髪飾りをポケットにしまって私も帰途についた。

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マホウショウジョ・リアリティショック 前編

学校からの帰り道。目の前にぬいぐるみが座っていた。
何かの動物をモチーフにしているんであろう、実在の生き物では確実に無い何か。
それに気を引かれながらも真横を通り過ぎようとすると、すれ違う瞬間、それの首がぐりん、とこちらに向いた。
「わぁ生きてた!」
「やぁ、ミチカちゃん」
ぬいぐるみが私に話しかけてくる。何故これは私の名前を知っているんだろう。
「……取り敢えず何? ぬいさん」
しゃがみ込んで目線を合わせ……いや高さ15㎝かそこらのぬいぐるみと完全に目線を合わせることは不可能なんだけど……とにかく用件を聞くことにする。
「ねぇミチカちゃん、『魔法少女』になってみたくないかい?」
「何それ」
「煌びやかな衣装を身に纏い、華やかな魔法を自在に操り、化け物達と戦って世界を守る、素晴らしい人種さ」
「へぇー……お断りしまーす」
立ち上がって帰ろうとする私を、ぬいぐるみが引き留めた。
「ま、待ちたまえよ! 君だって一度や二度はあるだろう。『魔法』や『ファンタジー』に憧れたことくらい! ぼくの誘いを受ければ、『魔法少女』としてどんなことだってできるようになるんだ!」
「へぇ興味無いなぁ」
「そ、そんな……」

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テーマポエムを作ろうの会 〈企画要項〉(再々掲)

もう6月ですね、早いですね。
…ということで企画「テーマポエムを作ろうの会」の要項の再々掲です。
クドいようですが開催期間は6月いっぱいということにしてあるのでね。
という訳で以下リマインド。

どうも、テトモンよ永遠に!です。
超突然ですが企画です。
タイトルは「テーマポエムを作ろうの会」。
皆さんの作った「キャラクター」とその設定から、他の方がテーマソングならぬ「テーマポエム」を作る多分今までにない企画です。

詳しくルールを説明すると、
①自分が今までに作ったキャラクター(ポエム掲示板への投稿の有無は問わない)、ないし新たに創作したキャラクターの設定をタグ「テーマポエムを作ろうの会」とタグ「(キャラ名)の設定」を付けて投稿します(タイトルはなんでもOKです)。
この時、テーマポエムを作る側にとって作りやすいようできるだけ詳しく、分かりやすい設定を投稿してください。
あとテーマポエムを作る人の制作の参考になるかもしれないので、ポエム掲示板で既出のキャラクターであれば登場作品のタイトルや投稿時期を載せておくといいでしょう。
もちろん現在進行形の物語のため、まだ出せない設定があるというキャラクターは無理してその設定を載せる必要はありません。
② 自分がテーマポエムを書けそうな設定を見つけたら、それに沿ってポエムを書いて投稿してみましょう。
この時タイトルは自分の好きなものを付けても構いませんが、タグ「テーマポエムを作ろうの会」とタグ「(キャラ名)のテーマ」を忘れないようにしてください。
ちなみにポエムを書く時は、設定の投稿にレスを付けるか付けないかは自由にします。
また、同じ設定投稿から複数のテーマポエムができることがあると思いますが、それはそれで良しとしましょう。

という訳で、上記のルールを守った上で企画を楽しんでください!
開催期間は6月28日(金)24時までです。
今回開催期間を長めに設定したのは、ここでは遅筆な方が多そうだからな〜という思っているからです。
ぼくも頑張って韻文に挑戦してみようと思うので、皆さんも気軽にご参加下さい!
それではこの辺で、テトモンよ永遠に!でした〜

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー キャラクター

・ギン
日比谷線の魔女。固有武器はシックル・クロウ(足に取り付ける鉤爪)。「シックル・クロウ」とはもともと、小型肉食恐竜の後脚に発達した1本の爪である。鎌のように湾曲した長い爪がついた指は普段は持ち上げているため移動には用いられず、狩猟時に獲物に突き刺し、体重をかけて引き裂くために使われた部位である。ギンの装備するシックル・クロウはこれを再現した金属製の刃を具えた品で、足首に取り付けられたそれは普段は持ち上がった状態で固定されているが、使用時には発条機構によって勢い良く振り下ろされ、鉄板や岩石をも容易く貫ける威力を発揮する。こんな武器を使っていることから分かるように、基本戦術はアクロバティックな三次元機動から放たれる蹴り技。シックル・クロウは壁や天井に貼り付きよじ登るのにも利用できる。

・キン
有楽町線の魔女。固有武器はクロスボウ。様々な性質の矢弾を発射する。通常の鏃のついた矢、炸薬や粘液の入ったタイプの矢弾、着弾地点や軌道上で魔法的効果を発生させる特殊な矢弾など、放つ矢弾は本当に様々。何、本体は矢弾じゃないかって? いーやクロスボウが本体だねとは本人の談。

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鉄路の魔女 〈あとがき〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
自分や他の参加者さんの作品が完結したので、企画「鉄路の魔女」のあとがきです。
どうぞお付き合いください。

今回の企画は確か去年の12月頃に思いついたお話でした。
元々「(萌え)擬人化」的なものを自分でもやってみたいと思っていたのですが、「今の時代色んなものがことごとく擬人化させられてるから、自分が使えるネタってあるのか…?」って思ってて中々踏み切れなかったんです。
でも最近鉄道熱が復活しかけて、「鉄道擬人化ってあまり見ないし、自分の好きなもので創作したい!」と思って作ったのがこの企画のベースとなる物語でした。
ちなみに「鉄道路線」の擬人化は先駆者がいるようですが、まぁいいでしょうね。
それで同時期に思いついた他の企画と一緒に昨年末に行った「企画アンケート」でみんなに投票してもらって、開催に至ったという訳です。

さて、今回も裏話はここまで!
参加して頂いた皆さん、今回もありがとうございました。
それで今後の企画についてですが、この企画を始めた時は「これで最後にしよう」と思ってたけど、当企画を開催してすぐに新しく面白いお話を思いついたのでやっぱりまた開催します。
次は、みんなの時間に余裕がありそうな8月に開催しようと思います。
ちなみに「花の学名」を使う企画になるので、参加してみたい人は「花の学名」について調べておくといいかもしれません…
それでは長くなりましたがこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした〜

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー その④

超高速で飛び込むように大鯰に追いつき、ギンはシックル・クロウをその頭部に突き立てる。
(こいつのパワー相手じゃ、私ごと引きずり込まれるだけだ。私如きの力じゃブレーキにもならない)
「……だから」
踵落としの要領で、突き刺した足を勢い良く振り下ろす。彼女自身の落下速度と蹴りの威力もあり、大鯰の下降は更に『加速』される。
「もいっぱあああぁぁぁあッつ!」
まだ自由な状態にあった方の足もシックル・クロウを起動して突き刺し、下方向への勢いを更につける。
「まだまだぁあ!」
真上から地面を透過して、キンの放った矢弾が大鯰に直撃し、爆発してその勢いで更に下方へと押し出す。大鯰とギンが地下を通る線路をすり抜けた直後、地下鉄の車両が轟音を立てながら通り抜けていった。
「……ふゥー、間に合った。そして、このまま殺す」
地上からキンの放った徹甲矢弾が、大鯰の片目を正確に射貫く。ダメージで暴れ狂う大鯰の銃創を、ギンの精密な蹴りが更に貫いた。事前の射撃によって砕かれていた頭骨はそれを止めることはできず、柔らかい脳漿に足首まで深々と沈み込む。
「どんな動物でも、脳味噌をブチ抜かれれば死ぬんだ」
一度格納されていたシックル・クロウが、再び起動する。その威力と衝撃は大鯰の内部から破壊を引き起こし、一度大きくびくりと身を震わせてからその幻影は動きを止め、少しずつぐずぐずと消滅していった。

「おかえり。勝てたんだ?」
出迎えたキンに、地上へ這いあがって来たばかりのギンは無言でサムズ・アップを示した。その手を引いてギンを完全に地上に引き上げ、衣服についた汚れを払ってやってから、2人は車道を出て手近な商店の屋根によじ登った。
「お疲れ」
「いえい」
拳を突き合わせ、互いを讃え合う。
「助かったよキンちゃん。っていうかよく私の意図が分かったね」
「まぁ、付き合いそこそこ長いからねぇ」
「あと、地面挟んで見えないはずの相手によくあんなに正確に当てられるよね……毎度のことながらちょっと怖いよ」
「いやぁははは。慣れてまして」

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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Extra 3

「鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches.」のおまけ…というかキャラ解説編その3です。

・“中央線快速の魔女”バーミリオン
一人称:アタシ
武器:槍
オレンジ色の髪で短いズボンを履いた、背の高い魔女。
自分が“由緒正しきJRの魔女”であることを誇っており、他の魔女より優れていることを信じてやまない。
スカーレットとは因縁があるが、なんだかんだ言って理解している模様。
カナリアと仲良し。

・“中央・総武線各駅停車の魔女”カナリア
一人称:カナリア(本編未登場)
武器:マシンガン
黄色い髪で(設定上は)黄色いミニワンピースを着た小柄な魔女。
口数は少ないが仲間思い。
バーミリオンと仲良し。

・“銀座線の魔女”オレンジ
一人称:わたくし/わたし
武器:刀の仕込まれた和傘
みかん色の髪で山吹色の和服を着た魔女。
穏やかで幻影含め誰に対しても優しい。
最古の“地下の魔女”であり、それ故に決して少なくない数の魔女の最期を見届けてきた。
そのため幻影を倒すことに忌避感があり、自身の目の前で幻影を傷つける者がいると相手が魔女だろうと妨害しにかかる。
スカーレットとはかつて仲が良かったが、幻影に対する立場の違いから袂を分かっている。

・幻影
頭部に無数の目がついた爬虫類のような姿の幻影。
舌を自在に伸ばすことができる。
裏設定ではかつて東京中を走っていた“都電”の魔女の成れの果て、だったりする。

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