薄れゆく生活感
遠ざかる現実味
ザアザアと、
砂嵐のように。
歩み寄る非日常
空想への堕落
ザアザアと、
砂嵐に飲み込まれてゆく。
「うん、だいたいわかったわ」
ルナは本をサクヤに返す
「あなたスゴいのね」
「俺は...そうなのか?」
「だって、ねぇお母様...お母様?」
クランは はっ とした
「え...えぇ、すごいわよ」
「お母様、どうかしたの?」
「いや?なんでもないわよ」
微笑みながらクランは答えたが、その表情は少しぎこちなかった...
俺はどれくらい眠ってたのか... そんな事を考えながらシンジは目覚めた
「あ、気がついた」
「オラクル...そうだ!あいつは!?」
「もういないわよ」
「そうか~よかったぁ。そういえば、俺はどれくらい寝てた?」
「そうねぇ...3日かしら」
「...寝過ぎたな」
「ははは そうね」
オラクルは母親みたいな気持ちになっていた...
教会の地下深く、ここには一国の王がいるような部屋がある
「そういうわけです、イズモ様、もうすでに大規模にやる他ないかと...」
「確かに、このまま小さいことを続けても、回収効率は悪いな...」
ロマノフにイズモ様と言われている、この少年、名前はイズモ。教団の裏の顔でのトップで、地下に封印されている、シャングリラと呼ばれる、教団の中では最高神を復活させようと暗躍している、いわゆる元凶である
「報告によると、あの邪悪な巫女もやられました...」
「ロマノフ!お前の魔法が弱かったからじゃあ無いのか?」
「いえ...お言葉ですが、私の使える最高の魔力を誇る呪文でございました...」
「ふむ...ならばいいだろう、計画発動は3日後だ...その間、せいぜい信者達を言いくるめといてくれ」
「はっ!」
「(ロマノフ...中々使える男よ...ふふふ...)」
イズモはあれこれと策を練り始めた...
画面の向こう巨大なスクリーンたくさん積まれた雑誌の表紙ちらっと見えた待ち受け画面、あちらにもこちらにも。
名前も声も歌も姿もしゃべり方も笑い方もお気に入りのブランドも知っていて、洪水みたいに流れてくる毎日のなかであの子の欠片をすくい上げ、綺麗な箱に並べておく、いつでも眺めていられるように。
期限付きの魔法。
いつまでも十七じゃいられないから。
いつか若さは価値をなくす。
でもいまだけは可愛いお人形。
あの子はきっと、愛、doll。
だけどほんとは、
哀、doll。
傷心を癒しに、海に行った。浜辺で、人魚がハープを弾いていた。
「お上手ですね」
人魚はハープを弾くのをやめ、やや警戒する感じで僕を見上げた。
「あ、どうぞ続けてください。僕もギター弾いたりするんですよ」
「いえ、もう飽きたので。……あの、この辺にビジネスホテルかなんかありますか?」
「ご旅行で」
「家を追い出されたんです」
「はあ。なんでまた」
「わたしは人魚国の王女なのです」
「それはそれは」
「父である国王が、国王であることに疲れ、これからは民主主義で行こうと考えて、選挙をしようと言い始めまして」
「ほうほう」
「わたしはそういうの嫌なので、反対したら出て行けと」
「民主主義、いいじゃないですか。選挙。大いに賛成だなあ僕は。選挙権を得てから投票は一度も欠かしたことないんですよ」
「……よく、わかりません。なんで選挙に行くんですか?」
「国民の権利だから」
「違うでしょ。周りのひとが行くからでしょ」
「そんなことは」
「いまの世の中いまの生活に不満でもあるの?」
「そりゃあ、ないけど」
「現状に満足しているのに選挙に行く必要あるの? 権威のあるひとの意見に流されてるだけなんじゃないの?」
「それはその……あ、海から誰か来ましたよ」
半魚人ふうの男が海から上がると、人魚に近づき、僕をちらっと見てからなにやら耳打ちをして、海に戻った。
「誰も投票に来なかったので結局王政を維持することになったそうです。候補者も最初から乗り気じゃなかったみたい。それではさようなら」
人魚は盛大にしぶきを上げ、たちまちかなたに消えた。浜辺にハープを残して