これでもう最後。
袖を通して
ボタンを留めて
リボンをつける。
見慣れたものが急に愛おしくなるのは、
離れる寂しさを知ってしまったから。
背伸びをしなくても、
やっと登れるようになった階段
誰かが落書きしたままの黒板に、
散らばったチョーク
居心地がいい図書室
嫌いだったのに
気付けば好きになってしまってた。
貰った卒業証書はまだ仕舞えないけど。
さよなら、さんかく。
またくるね、しかく。
また会えたとき、私に気付いてくれますか。
また会えたとき、私と話してくれますか。
また会えたとき、私に笑いかけてくれますか。
もう会えなくなることが怖くて、今までずっと背を向けてきた。でも、その時は必ず訪れる。
まだまだ伝えたいことがあります。
いつか、また会えたとき。そのときを夢見て、
今はさようなら
傷つきたくないから
傷つけたくないと言って逃げたよ
さよなら したくなる 前に
さよなら しなきゃね、って
しばらく遺体から離れたところで、男の子が落ち着くのを待った。聞いてみれば、男の子の名前は凜(りん)と謂うらしい。近くの村の住民だそうだ。
「お父ちゃんが、珍しい鳥を見せてくれるって散歩に来たんだ。そしたら、その珍しい鳥は居なくて…帰ろっかって言ってる途中に、鳥が鳴いたんだ。なんだか急に不安になって鳥見てて…もう一回帰ろって僕が言ったら、もう…お父ちゃんの首が…無くて…‼そのまま崩れるみたいにして…っ!」
恐怖でしかない。
拙い言葉ながらながら、しっかりと伝わった。子供にはあまりに過酷である。
「凜、君の村にまずは戻ろう。話はそれからだ。」
朔の言葉に頷く。
蒼は何も言わず、見守っていた。
「道、覚えているかい?」
「うん…此方だよ。」
すると、その村まではすぐに着いた。しかし、やはりながら事はそう上手く運ぶものではなかった。
優しい視線を忘れてく
向けられた笑顔が掠れてく
君の その 何も要らない と言いたげな
そんな顔を見た
それだけで
人の技術と、人の叡知により、人は絶滅する。
それでも僕らは、前を見て生きる。
この命がつきるまで、土を耕し種を植える。
与えられたものをむしゃむしゃと
食べていたら何かが喉の奥でつっかえた
魚の小骨だろうか
いや、ちょっと違う、
だんだん苦しくなってきた
人から与えられたものなんて
むしゃむしゃ食べちゃいけないね
金平糖を放り投げるよ
君に当たって星を散らすといい
ハートマークをつけるよ
あなたのこと きっと何ひとつ知らないけど
あなたのことばはとても素敵だよ
胸を張っていてよ
胸を張っていいよ
一つになってしまうくらいなら
いっそ独りぼっちのほうがマシだろ
金平糖を放り投げるよ
闇雲の下に星を降らすといい
長いいのちの後遺症で、いつも伏し目がちな君を前にして僕は。薄氷みたいな爪に引っ掛かった、やたらマルやらバツやらが付いた答案用紙を無理にうばいとって、全部サンカクに書き換えることはできない。ずーっと続くハルの散歩道、どんなときも流れる陽気な唄、朝焼けの投影機。宇宙の錬金術師じゃないから、そんなものは造れない。
わからない わからない
今日も気が付けば下を向いてスノードームを掻き回し、こんくりに叩きつけられないでいる
共に歩くのも止まるのも、隣はあなたがいい。あなたの手を握ってもいいかな、照れくさそうに笑うあなたが心地よくて。
同じ方を向いて、同じことを考えて望んで、熱を分け合って、ただあなたと眠っていたい。冷たい涙をすくい上げて温めてみせる。あなたじゃなきゃダメだと心が泣く前に。
近すぎたからわからなくて、焦点が合わないから大事なものを見落としていた。時を止めて、隅々まで探し回ることが出来たらいいけど、それはきっと出来ないから、今ここでひたすらぐるぐる回るんだ。
やがて訪れる最期の瞬間をこの目に焼き付けて、静かに迎えに行けるように。