心にあいた穴
ここに誰かがいた
そんな気がするのはなぜ?
心の奥の奥で
この世界の果ての果てで
誰かをもうどうしようもないくらい
想ったことがある
そんな気がするのはなぜ?
この記憶の先の先で
あなたに待っていてほしい
そう思ってしまうのはどうして?
この時間の流れのなかに
あなたは今どこにいるの。
そう考えてしまうのはどうして?
あなたは誰ですか?
この景色を覚えていますか
あなたに会いたい
そして伝えたい
誰にでも、怨みつらみはあるものさ
連続する一行の詩のように、夢はぶつ切りで続いていた
欲望は、朝日が世界を犯すように
呟いた何気ない怒気、その意図を、汲まなくて良いよ。
目を覚まして、恋をしたら、明け方で
夜があんなにも濃密だったなんて
あたたかさが、あんなに恐ろしかったなんて
逃げて逃げて逃げきって
次の夜の透明な裾を、掴め
当たり障りのない不幸、僕らの喉元に然り気無く
忍び寄ってきたら、見えないように、遠い遠い名を呼ぼう
逃げて逃げて逃げきって
淡い紅い声が吐き出る。あの人は往く道の端を折る。
そうだろう、そうだろうとも
遠い遠い君の姿だけを見ていたかった
いつか、別の世界で目覚めるように
左腕を切り刻む彼女
ひんやりとしたシーツの上に愛用の剃刀
安全サックを外すのが 一等むつかしいの
暗闇に目を凝らす彼女
ひんやりとしたシーツの上に何度目の寝返り
気のやり方なんて とうの昔に忘れてしまった
月影に照らされた彼女
ひんやりとしたシーツの上に涙の凍る頃
漸く手に入れた赤い安寧を
今夜も懲りずに潰してしまった