なんかさー
んー?
わかんないんだよねー。
何が?
今の自分の気持ちが。
えっ?どういうこと?
お前のことが好きだってこと
君のことが好きだってこと
貴方のことが大好きだってこと
それが本当に自分の気持ちなのかなぁって
最近思う
人間って
人間の心って
難しいなあ。
“人と比べて自分は劣ってるからって、気にすることない”
桜尾さんはいつも私の心を見透かしたようにアドバイスをしてくれる。不思議な人だ。
「…はい。そうですね」
私は笑って桜尾さんに返した。
桜尾さんもいつものようにふわりと笑い返してくれた。
(この人はどうしてこんなに優しい笑顔が出来るんだろう…)
「よし、そろそろ閉める時間だ。白帆さん、夏川くん、また明日ね」
かなり話し込んだ。
人と関わることが苦手な私だが、夏川くんとは同じ本好きということで話が合ったので、すぐに仲良くなれた。
また明日 と桜尾さんが言ったのは明日、夏川くんも手伝いに来てくれるということだからだ。
彼もここが、桜尾さんのことが気に入ったらしい。
また一人、常連客が増えましたね。
このまま、順調に増えていくといいですね。
と、心の中で桜尾さんに話しかけた。
すると桜尾さんは、ゆっくりとこちらを見て優しく笑った。まるで私が心の中で言った言葉に喜んでいるかのように。
桜尾さんは、人の心が読めるのだろうか。でも、問い詰めたりはしない。彼が話してくれるまで待とう。話したくないならそれはそれで、別にいいから。
「さよなら。また明日」
夏川くんがそう言って私たちに背を向け帰っていった。
「僕はまだちょっと仕事が残ってるから」
桜尾さんは店内から手を降りながらそう言った。
「じゃあ、また明日」
「うん。また、明日もよろしくね」
最近は退屈だと感じることが少なくなってきた気がする…。
『骨董屋』の古びた扉がゆっくりと開かれた。
ギギィ…
「あなたは確か…?」
「君って…」
「夏目くん?!」
夏目 阿栗くん。最近大学で噂されている花と本が大好きな男子。
まさかこんなところでお目にかかれるとは....。
「えっ.....僕のこと、知ってるんですか?」
夏目くんは驚いた顔をした。
自分が噂されていることを知らないらしい。
「結構有名ですよ、夏目くん」
「そうなんですか?!」
意外だ…って顔をしてる。
「ん?知り合いなの?白帆さん」
桜尾さんが、空気が読めなかったらしく直接聞いてきた。
「知り合いというか、同じ大学なんです」
話したこともないのに知り合いだなんて言えないし。
「白帆…もしかして茜さんですか?」
えっ?アカネ?あぁ、茜ね…。
「私は茜じゃないです。茜は私の姉です」
白帆 茜は私の双子の姉。
生まれつき天才肌で楽器は弾ける、勉強は完璧、人もいい、人気者だ。そりゃあ、夏目くんも知ってるだろう。
「あっ、妹さん…。双子ですか?」
「はい」
姉の話題になるとつい素っ気なくなってしまう。
別に姉が嫌いな訳ではない。ただ、比べられるのが嫌なだけで。
「人と比べて自分が劣ってるからって、気にすることないと思うよ」
会計をするために作ったカウンターに座り、頬杖をつき外を見ながら桜尾さんが言った。