どうして
そんなセンスの無いことばっかり
どうして
私を救ってくれないの
何も何も何も
残らないまま
靴擦れに絆創膏を被せて
生きていた
生きてしまっていた
「えっ………憧れって…?」
夏川くんが心配そうな顔をした。
「いえ。何でもないんです」
夏川くんには隠せても桜尾さんはたぶん全部知ってるんだ……。
(心読めるんだもんな、桜尾さん)
そう思ってふと桜尾さんの方を見た。
桜尾さんは優しく微笑んでいた。
「僕は何も言わないよ。白帆さんに言われない限り」
(やっぱり優しい人だ…)
人の心が読めてもあえて何も言わない。
人の心が読めるから人の気持ちがよくわかるんだろうか。
“ふじばかま”の花言葉… '思いやり'
「確かに“ふじばかま”っぽいですね」
いきなり話しかけられて少し驚いた夏川くん。
そして嬉しそうに
「そうですよね。ぴったりだと思うんです」
そう言われた桜尾さんは嬉しそうに照れ笑いした。
それから私の方に向き直して優しく笑い掛けてきた。
「ゆっくりでいいんだよ。白帆さんにはまだ沢山時間がある」
“時間は沢山ある”
そうだ。私はまだまだこれからだ。
ゆっくり答えを出せばいい。
ゆっくりと、確かな答えを。
「運命っていつ決まるかわかりませんからね。突然やって来るものですから、ゆっくり待てばいいと思いますよ」
夏川くんがそう言った。
とても大人びた言葉だった。
甘い言葉で慰めようだなんて
甘い考えだろう
「本音で語り合おう」だなんて
キレイごとに聞こえてしまうだろう
バスから見える景色は相変わらずで
通り過ぎる高級車を横目で見て
「ふざけろ」って呟いた
今、君が泣いていて
隣で笑っている人もいる
だけど、羨ましがらなくていいよ
今、苦しいのは 逃げずに
前に進もうとしているから
楽な方になんていくらでもいける
だけど、目を背けて
楽しいふりをするよりも
向かい風にでも当たっていく方が
素敵じゃないかな
「桜尾さんって…」
夏川くんが口を開いた。
「…初めて会ったときから思ってたんですけど
……“さくら”みたいな人…ですよね」
“さくら”みたいな人…。
「どういう意味?」
桜尾さんが問う。
「“さくら”……具体的に言うと“ふじばかま”かな。
“ふじばかま”の花言葉が '思いやり'、'ためらい'なんですよ。優しい感じの花なんです」
そうだった。
出会ってからまだ少ししか経っていなかったからか、夏川くんのこの一面を初めて目の当たりにした。
「はな…好きなんでしたね」
私のその一言で夏川くんの表情が陰った。
「変人………って思いました?」
元々低い夏川くんの声が一段と低くなった。
「…別に………よく言われるんですか?」
予想と違う返答に驚いたのか、少し表情が明るくなった。
「……はい。よく言われるんです。男のくせに、変人変人ーって」
やっぱり。よく言われるんだ。
「思いませんよ、変人なんて。逆に………」
うつむき加減で私は言った。
「憧れます」
「えっ………?」
ひっく ひっく
吸って 吸って 吸って
ひっく ひっく
まだまだ 吸って 吸って 吸って
ひっく ひっく
吐き出すことを忘れた悲しみを
ひっく ひっく
流すことのできない涙を
ひっく ひっく
繰り返す過ちを
ひっく ひっく
生きてるから
吸って 吸って 吸って
アコースティックギター
人差し指がひりひり
おなかすいたから
春雨食べようか
ラジオから
すきなひとの声
眠たいしあわせ
目障りだよしてくれよ。
笑えば楽だって解ってるけどさ。
上手く笑えないのに。お前はいっつも笑ってる。
自分で創ってしまった自分は好きじゃあないんだ
表情を押し殺して。笑いもせず泣きもせず。
なのにお前はいっつも笑って泣いてる。
知ってるさお前は俺が押し殺した俺本人だろ?
もう解ったからやめてくれ。
それ以上姿を見せつけないでくれ。
俺は今以上自分を嫌いになりそうだ。
霧の中の幻 幻の中の霧
何が本物か 分からない
それが恐くて たまらない
霧の中に幻が あるのなら
幻の中に 入らなければ
良い けれど
人間は幻の中に ある誘惑に
負けてしまう しかし
己を鍛えれば 入らずに済む
幻の中に霧が あるのなら
幻の外へ 出る必要がある
幻の中に 入ったらなかなか
外に 出られない
幻は己の 欲の塊だから
霧が晴れても 我等の旅は
終わらない 本物と思ってた
物が偽物かも しれないから
雨が降ると 旅は続けられない
そんな時 ボクはキミを思い出す
濡れないように 傘を
差し出す キミの事を・・・・
心の雨 想い破れて 強くなる