今日は久しぶりの遊園地
ここもすっかり変わったな
小さく呟いてゲートを通る
絶叫系も良いけれど、
メリーゴーランドも悪くないな
ゆったりと回る木馬と
ゆるりと流れる時間と
通り過ぎたジェットコースターと
遅れて聞こえる悲鳴
5時のチャイムが鳴って
そろそろお腹も空いてきた
上った月を見て
明日は満月だっけなんて思ってると
遠くから聞こえてくる
営業終了のアナウンス
…誰かそろそろ降ろしてくれない?
君は私を忘れてくれるのかな
私は君を忘れられるのかな
私はあの子を選んだはずなのに
なぜか君の笑顔ばっかりでてくるよ
君を忘れるなんて
私には無理みたいだ
ごめんね
”ここから”と しるして
戦隊色 とりそろえた付箋
ひだひだの すき間から
何度も 何度も
あと何回?とか 聞かないで
ぼくら の片手 で おさまってしまうから
煙草の香が内耳を侵す
煙草の香が罪の証跡
背中に焼きつく熱の束
痛くて辛くて縋りつく
舌先の道徳が煩わしい
噛み砕く
嚥下する
瑕だらけの瞼の裏
混濁した醜い記憶
かわりのない感情
引き摺る先には何もない
私は明日も泣いている
これはきっと正しくないと
これはきっと愛じゃないと
知ってるかい?
この学校の怪談話。
ここから先は
実際に僕が体験した話だ。
聞きたい人は是非聞いてほしい。
日高昇足猶慵起
(日高く昇り足れども猶ほ起くるに慵し)
古家唯響蹴空缶
(ただ古家に空缶蹴る音の響くのみ)
頬白啼声欹枕聴
(頬白の啼く声は枕をそばだてて聞き)
御嶽山雪閎襖看
(御嶽山の雪は襖を広げて看る)
信濃即常遅流行
(信濃即ち常に流行より遅れ)
木曽仍少人多猿
(木曽仍ほ人少なく猿多し)
心泰身穏是帰処
(心泰く身穏やかなるは是れ帰する処にありや)
我何座禅組気懸
(何ぞ我座禅組たることを気に懸けん)
ラッコに育てられた人間の子どもがいて、ラッコが人間の子どもなんか育てるわけねえだろう。海の中で人間育つかよ。溺れるだろうが。なんて言われるかもしれないがいるものはいるのだからしょうがない。ラッコに育てられた人間の子どもは青年になり、どうも自分は親きょうだいとは違う種類の生き物みたいだなあと思い始めたころ、漁船に拾われ(本人は捕まったと感じたようだが)、人間の社会で生きるようになった。
感受性期はとっくに過ぎていたが柔軟な脳ミソだったらしく片言だが人語を話せるようになった青年は、ビルの清掃スタッフになった。
青年も年ごろらしく恋に落ちた。同じ職場の事務員だ。青年は事務員をデートに誘った。事務員はセレブ志向だったが青年はイケメンだったし何だかエキセントリックな魅力があったから応じた。海への郷愁があった青年は水族館に向かった。インスタグラムにアップするからとやたらと写真を撮らされるのには辟易したが楽しかった。ラッコのコーナーに来た。何ということだ。自分を育てた母親ラッコがいた。母親ラッコは、幸せそうだった。そりゃそうだ。餌の心配も流される心配もない。海に比べたら天国だ。
青年は、無言で事務員の手を引きその場を離れた。考え過ぎたら駄目だ。と思った。