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もう決めたから。

心臓が爆発しそう。
断られたら、もしフラれたら、これが怖い。
だけど、このまま消えてしまう方がよっぽど怖い。
大丈夫。後悔は先に出来ないから後悔なんだから。

あなたが好きです。

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本日の魔法講座 その318

ベランダから灯る そしたらのさき
ぼくは夏の虫みたいに すいこまれて
きゅるきゅる鳴る金属音で 花火と花火が 消えるまで

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人の音楽を聴くと耳から心に繋がる液体が流れてきてそれを吐き出そうとして涙に変わる。

私は涙にならないまま心に残って液体は固まって心に膜ができて心が強くなるんだ。

耳は私にはなくなったらいけないものだと思う。

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くまとジュゴン

多数決があるなら、多数の意見があるわけだ。
で、いつの間にか「多数の意見」が「定番」とか「普通」とかに成り済ますわけさ。
ここで勘違いしてはもらっては困る。
その「定番」や「普通」が、絶対的存在と思ってはいけない。
それは、ただ多数の意見を表す言葉が変わっただけで、少数の意見は消滅していない。生きているんだ。
しかも、それはそれは希少な存在で、とても確率の低い貴重なことだ。もしかしたら絶滅危惧種のエゾヒクマやジュゴンと同等かもしれない。
熊と!ジュゴンと!同等なのだ!
そう考えると、少数もなかなか悪くないだろう。


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無題

あんなに身を焦がしたのに
私は もう別の恋を詠える
それは貴方も きっと同じね

茶色の千鳥 緑の嘴に眼鏡を銜えて
遠く海を突き進んだ あの日から

魔法はするりと溶けてしまった
それが無ければ何にも出来ないような
そんな気持ちでいたけれど

茶色の千鳥 緑の嘴に眼鏡を銜えて
遠く海を突き進んだ あの日でも

私は真っ直ぐ家路へ着いて
お風呂を洗ってご飯を作って
布団を敷いて眠りに就いた

あんなに身を焦がしたのに
私は 涙の一つも零さなかった
それは貴方も きっと同じね

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人魚のふりして夢をみる

今、わたしがここで卵パックを落としたなら、じゅわっと音を立てて、アスファルトに無数の目玉焼きが姿を表すだろう。そんなことを考えてしまうほど、暑い。アイス食べたい。早足でぺたぺたするビーチサンダルは去年、あの人と行った海の砂をぽとぽと、こぼす。ギラギラしたやつだった。眩しいほどに、焼けそうなほどに。立ちくらみしたら波が押し寄せてきて、これじゃいけない。小石を蹴飛ばす、剥き出しの赤い爪が夏に喧嘩を売り飛ばす。
強引な人がいい。クーラーの効いた部屋でだんだん駄目になっていくわたしを無理矢理外に連れ出して、海に投げ込むくらいの人がいい。でも、優しくしてほしい。地球の中心に引っ張り込まれて、空気をなくして、状況が飲み込めない、ずぶ濡れでブスなわたしを笑って浮き輪を投げてよ。そしたら君も飛び込んで、ふたりで海になろう。
夏みたいな男は最後は台風になって、どこか知らない北の国へ去って行った。激しい雨はこの胸にためておいて、干からびた時、飲み水にでもしますよ。

扇風機の前、わたしだけの場所。首筋に張り付く一筋の黒髪。うっすら霜のついたソーダアイスの袋、痛いくらい冷たい舌の先。この夏。わたしだけのもの。わたしだけのもの。

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アポイントメントⅢ

息の詰まる緊張感
目の前には無機質なスイッチ
アポイントメント
これは約束の繋がれた道

そろりと手を伸ばして
微かな手応えに息が止まった
エレベーターは昇っていく
緊張と恐怖に足はすくむ

ふわっと白い光が記憶を満たした
半分怒ったあなたの顔は
懐かしかった
優しかった
幸せだった
サディスティックに片方だけ
口の端を 吊り上げて

お友達になってください
なんて言えないと思ってたのに
キューピッドが
気紛れに
悪戯に
本音を 暴いた

だから
幸せだったんだよ
本当に 本当に

幸せなんだ

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唇重ねるたび
分からなくなる

手を結ぶたび
すれ違う

それでも
隣に

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ある生き物とある生き物の会話 その19

「世の中の人間が一番求めてるものってなんだと思う?」
「一番?お金?」
「それもだろうけど、一番じゃない」
「じゃあ愛」
「うん、それも正解」
「一番って言ったのに」
「もっと大きく括れると思うんだよ。つまり、正解は共感だ。愛だって、完全に一方通行な愛を受けても気持ち悪いんだ。人は、愛し合いたいんだよ。他にも」
「SNSでいいねされたいとか」
「シンプルに話を聞いてわかるよと言って欲しいとか」
「褒められたいとか」
「うん、それも共感だと思う。褒められるっていうのは、良いものに対する基準が合致したということだ」
「承認欲求だね」
「でも、承認したくないこともある」
「できないものは仕方ないんじゃない?」
「それがそうでもない。その場で、そうだね、わかるよ、君は頑張ってるって言えば済むのに、何故か言いたくないことがある。言えば全部丸く収まるのに」
「本心と違うことを言うのは気持ちの良いものではないよ」
「そもそも共感に対して躊躇いがある人もいる」
「そうかな?」
「場合によるんだ。その人は褒められるのは嬉しくても、例えば、なるべく愚痴を言いたくないとか。愚痴を言う人も嫌い。でも気持ちを共有することは確かに負担の軽減になる」
「わかっていても嫌なものは嫌と。どっちがいいんだろうね」
「さぁね」
「ああ、だから」
「?」
「いや。なんでも」

(だから彼女は、共感を空想の中に求めるのか)